【5類へ移行】5月8日から。2類相当から変わるコロナへの対応

目次

2023年1月、政府は5月8日より、新型コロナウィルス感染症の位置づけを現在の「2類相当」から「5類」に移行する方針を発表しました。2020年1月の大流行から約3年、ワクチンの普及やウィルスの弱体化、新薬の開発が進んでおり、一部の制限はありますがイベント・旅行といったレジャーを楽しめるようになりました。
5類に移行した場合、私たちの生活の中で根付いたマスクやソーシャルディスタンス、そして医療費やワクチン接種の負担はどうなるのでしょうか。

感染症法とは

1999年4月に「感染症法」が施行されました。それまでの「伝染病予防法」「性病予防法 」「エイズ予防法」が統合されたもので、感染症予防やその患者が受ける医療措置について定められています。
感染症法は、新しい感染症の発生や医療環境の変化に伴い、たびたび改正が行われています。(例:2002年に東アジアで流行した「SARS(重症急性呼吸器症候群)や高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)の感染時)

感染症が増えるイメージ

感染症法上での分類

感染症法では、症状や原因となるウィルス・細菌の感染力に応じて、1~5類とその他3つに分類され、分類毎に国や自治体での措置が決められています。

1類 命の危険が極めて高い感染症 エボラ出血熱、ペスト、クリミア・コンゴ出血熱など
2類 感染したときの重症化など危険性が高い感染症 結核、SARS、ジフテリア、鳥インフルエンザ(H5N1やH7N9)など
3類 危険性は高くないが、特定の職業集団(食品系など)で集団発生をおこす可能性がある感染症 コレラ、腸チフス、赤痢、パラチフスなど
4類 人から人ではなく、動物や飲食物を介して感染し、健康に影響を及ぼす恐れがある感染症 狂犬病、サル痘、E型肝炎など
5類 感染力や重症化など総合的に危険性が低い感染症 季節性インフルエンザ、梅毒、風疹など
新型インフルエンザ等感染症 新型インフルエンザと再興型インフルエンザがあり、前者は新たに人から人へ感染するウィルス、後者はかつて世界的に流行した感染症。
いずれも国民がその感染症に対し、免疫を獲得していないためまん延の恐れがある
指定感染症 感染症法の1~3類に分類されていない、また1~3類に相当する対応が必要な感染症。
政令で指定されており、期間は1年間
新感染症 人から人へ伝染し、既知の感染症の症状や治療の結果が異なるもの。
病状は重症で、国民の生命や健康に重大な影響を与える恐れがある感染症

コロナの2類相当について

新型コロナウィルス感染症は、この感染症法上では「2類」ではなく「2類相当」に分類されています。

2020年2月、政府は新型コロナウィルス感染症を「指定感染症」としました。しかし、世界的な感染拡大が起きた上、諸外国では重症患者や死亡者が増加し、入国制限・行動制限等が実施されたことを踏まえて、日本では2020年3月に新型コロナを「新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)」に位置づけしました。
この特措法によって、緊急事態宣言や行動制限を発動することができるようになったのです。実際、これまで数度にわたって緊急事態宣言がなされたのは、記憶に新しいと思います。
その後、2021年の感染症法の改正で、新型コロナウィルスは「指定感染症」から「新型インフルエンザ感染症」に変更されました。分類上は変更されましたが、当ウィルスが新たなウィルスで特徴が明らかになっていなかったため、実際は2類と同じ扱いとされ「2類相当」と呼ばれるようになったのです。

2023年2月、新型コロナウィルスへの対策としては主に下記が挙げられましたが、2023年3月にコロナ5類後の検査や外来については自己負担とする方向で進められています。

  • ① 検査や陽性が判定した後の外来医療費は自己負担
  • ② 感染者や濃厚接触者の行動制限(外出自粛、就業制限)要請
  • ③ 保健所にて感染者の健康状態把握、入院の調整
  • ④ 患者の入院勧告

5類になったらどうなるのか?

では、新型コロナウィルスが5類へ移行したら、私たちの生活はどのように変化するのでしょうか。5類に引き下がると季節性インフルエンザと同等になるとはいえ、具体的な内容については今後専門家の意見のもとに決定される見通しです。

2類相当から5類へ

changeのイメージ

2類相当から5類へ移行した場合の、想定される変化です。

  現在(2類相当) 5類移行後
診察 発熱外来、指定医療機関 原則は一般医療機関
行動制限 患者 最大7日間
濃厚接触者 最大5日間
就業制限
健康状態の報告が必要
なし
検査費 公費負担(無料) 検査費用は自己負担。
ただし、高齢者施設に従事している人達の検査は無料を続ける方針
医療費 公費負担(無料) 外来の医療費は自己負担。
入院が必要となる場合は公費支援を行う。
また、高額治療薬は当面無料を継続
入院措置や勧告 あり なし
ワクチン費用 公費負担(無料) 当面は公費で検討
マスク着用 屋内推奨 屋内外ともに不要、個人の判断
感染者数 全数を把握できるように報告義務がある(簡略化) 定点把握

医療費について

2023年3月にコロナ5類移行の医療費について方向性が明らかになりました。当初5類移行後も検査をはじめ医療費は当面公費負担とありましたが、5月8日以降は自己負担となります。

検査費用:自己負担(ただし、高齢者施設等で勤務している人は施設内感染を防ぐために無償を継続)

外来医療費:自己負担となります。例えば70歳未満で3割負担の場合、自己負担額は最大4,170円となり、インフルエンザに罹患したときの外来医療費4,450円とほぼ同じになります。

入院医療費:自己負担を求めますが、高額になる場合は2023年9月末まで月20,000円程度を軽減します。

治療薬:既存のコロナウィルス治療薬は1回の治療あたりの薬価は9万~25万円程度と非常に高額です。治療薬については2023年9月末まで全額公費負担を継続の予定。

入院医療費や治療薬については、2023年9月末まで自己負担額が軽減される場合がありますが、それ以降については感染状況を踏まえて延長するかどうか判断されます。

名称について

2月16日、厚生労働省は新型コロナウイルス感染症の名称について、5類移行後に変更する方向で調整しているとの報道がありました。新型が付いていると特別感が増しますが、新型をなくすことにより、平常時への移行を進めたいようです。
報道された2月16日時点では「コロナウイルス2019」「コロナ2019」が取り上げられましたが、新名称案は複数あり、これから調整されるようです。2019は2019年中国武漢で本感染症の発生が確認されたことから用いられています。

懸念点

行動制限の解除やマスク着用義務など、私たちの生活上で開放される部分は大きい一方で、懸念点があります。

診察、検査のイメージ

医療費が自己負担になった場合、治療を受けない受診控えが増えるとみられています。感染の広がりだけではなく、適切な治療を受けられず容態によっては重症化する可能性があります。ワクチン接種費用も同様で、接種率が低下すると、免疫を持つ人が減り感染しやすくなります。
また、どの病院でも受け入れが可能になった場合、感染者と非感染者との動線を分ける必要性があり、そもそも病院が受診を断るケースも考えられます。
これまで感染者や濃厚接触者は自宅待機でしたが、行動制限がなくなり自由に外出することができるので、市中感染の機会がより一層増えるかもしれません。特に、就業制限がなくなると職場でクラスター感染し、業務に支障が出ることも危惧されています。

季節性インフルエンザとの違い

季節性インフルエンザは5類に分類されます。
下記の表のように、致死率はオミクロン株が主流になってから軽症の傾向があるため、季節性インフルエンザと同程度とみられています。

致死率 60歳未満 60~70代 80歳以上
第5波デルタ株(2021年7~10月) 0.08% 1.34% 7.92%
第7波オミクロン株(2022年7~8月) 0.00% 0.18% 1.69%
季節性インフルエンザ 0.01% 0.19% 1.73%

新型コロナの重症化率・致死率とその解釈に関する留意点について(厚生労働省)を元に作成

感染力や後遺症は、新型コロナウィルスの方が強いとわかっています。また、季節性インフルエンザは冬に流行しますが、新型コロナはこの3年間季節問わず感染が広がってきました。

  致死率 感染力 治療薬 季節性 後遺症
新型コロナウィルス(2類相当) 同程度 × 多数報告
季節性インフルエンザ(5類) コロナに比べリスクは低い
新型コロナワクチン接種の予診票

毎年、冬前になったらインフルエンザの予防ワクチン接種が始まります。しかし、新型コロナには季節要因がありません。
今後の新型コロナのワクチン接種については、当面は公的負担といわれていますが、費用や接種のタイミングについてはこれから検討されることでしょう。

マスクの着用について

【2023年3月3日更新】

2023年2月10日、政府は新指針としてマスクの着用についてまとめました。
3月13日以降、個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねることになります。これにより、マスク着脱について強制することないように個人の主体的な判断が尊重されます。※

※参照:令和5年3月13日以降のマスク着用の考え方について

ただし、高齢者や重症化リスクが高い方への感染を防ぐために、できるだけ着用したほうが良いとされるケースもあります。

  • ① 医療機関を受診する場合
  • ② 高齢者や重症化リスクが高い人が入院、生活する医療機関や介護施設に行く場合
  • ③ 通勤ラッシュ時、混みあった電車・バスへの乗車時

また、新型コロナ感染症の流行時に感染から守るために重症化リスクの高い方が混雑した場所に行くときもマスクを着用することが効果的です。

さらに文科省からは今年度の学校の卒業式に出席する生徒と教職員は原則マスクの着用を不要にするという通知を各都道府県の教育委員会に通達しました。(ただし校歌斉唱や合唱時は除く)もちろん、十分な換気の徹底や近距離での会話を避けるなど、配慮すべき点はありますが、マスクの着用については本人の意思を尊重し、決して着脱を強制することないように緩和されるのは生徒や保護者の方にとっては嬉しい限りですね。

新年度となる4月1日からも「学校教育活動の実施に当たってはマスクの着用を求めないことを基本とする」と明らかにしています。

参考までに、音楽コンサートやサッカー、野球などのスポーツ観戦時については正しくマスクを着用していれば、100%収容できるようになり、声出し応援を解禁するケースが増えており、少しずつコロナ前の日常に戻りつつあるようです。

私たちの生活において、気になるのはマスク着用の義務。5類へ移行した際の、マスク着用について政府の方針は「屋内・屋外問わず個人の判断に委ねる」と発表しています。

現在の2類相当下では、屋外でのマスクは一定距離を保てる場合なら不要とされています。※

※参照:厚生労働省 屋外・屋内/子どものマスクの着用について

しかし、屋外でマスクを外している人はごくごく僅かです。どうしても他人の目が気になったり、うつしたら(うつされたら)怖いという気持ちがあったりするのではないでしょうか。 また、屋内から屋外への移動時や、公共交通機関の利用時は着用しないといけないので、付け外しの手間もあります。特に日本人の場合は、感染対策と同時にマナーを重んじる傾向があり、いきなり外すことに躊躇する人が多そうです。

しかし、育児や保育、介護の現場で、顔半分が隠れた状態では相手に表情がわかってもらえませんし、「同級生の顔がわからないまま卒業した」という学生が多いことも現状です。 マスクを外してもよいのであれば、できるだけ外してコミュニケーションを取れるようにしたいものです。もちろん自身に感染の疑いがあったり、周囲で感染の確認があったりする場合は、必ず外出時のマスクが必要です。

海外では

海外では、日本よりも早く行動制限やマスク着用義務がなくなっています。 例えば、いち早くワクチン接種が始まったイスラエルでは、2021年春にはマスクの着用義務が解除されました。他にも、イギリスは2022年2月にすべての法的な規制を撤廃、アメリカでは2022年3月にマスク着用義務が全米50州で廃止されました。 海外のスポーツ中継を見ても、マスクをしている観客はほとんど見かけません。それだけでなく、ついにテニスの全豪オープンでは選手が陽性の場合でも試合出場が可能となっています。

世界地図

そもそも欧米人は、マスクの着用習慣がありません。マスクをしているとギャングを想像するという理由もありますが、口元の表情がわからないのでコミュニケーションを取りづらいことが大きいようです。 また、行動規制の緩和は経済活動の正常化に繋がることも大きな理由です。入国制限を撤廃する国や、接種証明提示が不要の国も増えてきました。

感染対策と経済活動の両立はもちろん、子どもの健やかな成長を願うためにも5類引き下げは必要不可欠です。5類への移行で、私たちの生活が少しずつコロナ前に戻ることを期待できるのは確かですが、それでもコロナウィルスのすべてが解明した訳ではありません。

後遺症のリスクや、高齢者への感染リスクも考慮して、感染の可能性を感じたらただちに検査を受け、受診するようにしましょう。できるだけ安静にし、外出するときは必ずマスクを着用して、職場・市中感染を可能な限り防ぐように意識した行動が必要です。

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よくある質問

5類へ移行後はどうなりますか?

5類へ移行した場合の想定される変化として下記に掲載します。

  • 診察・・・一般医療機関で受診できるようになる。
  • 行動制限・・・なし。
  • 医療費・・・当面は公費での負担を検討。
  • 入院措置、勧告・・・なし。
  • ワクチン費用・・・当面は公費での負担を検討。
  • マスク着用・・・屋内外ともに不要、個人の判断。
  • 感染者数・・・定点把握。

5類に移行しても大丈夫?

制限されていたものが解放されることによる懸念点は勿論ございます。

  • 医療費やワクチン接種費用が自己負担になった場合、通院や接種控えにより感染拡大や治療を受けず重症化する可能性がある。
  • 一般医療機関でも受診が可能になることにより、病院によっては感染者と非感染者との動線分けが難しくなる。
  • 感染した際、自宅待機等の行動制限がなくなることから、市中感染や職場でのクラスター感染の可能性が考えられます。

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