検査キット

【抗原検査キット】医療用と研究用の違いについて

目次

※本コラムは2022年11月時点での情報です。新型コロナウイルス感染症の情報は随時アップデートされていますので、最新情報は厚生労働省や自治体のサイトをご確認ください。

新型コロナウイルス感染症の検査について

2022年9月に、厚生労働省が承認した一般用抗原検査キット(OTC)は、第1類医薬品としてインターネットでの販売が解禁されました。
これまで承認を受けた抗原検査キットは、医療機関の診断での利用、あるいは薬剤師がいる薬局での対面販売でしか入手できませんでした。しかし、これを機に24時間いつでもインターネットで注文が可能になったのです。
参考までに、OTCとは「Over The Counter」の略です。「カウンター越しに薬を販売する」という意味で、2007年より市販薬から「OTC医薬品」に名称を統一されました。
一方、2022年6月に厚生労働省が行ったアンケート※によると、コロナの抗原検査キットに承認を受けた「医療用」と、承認を受けていない「研究用」の2種類が存在していることを知らない人が、6割もいました。さらに「医療用」と「研究用」があることを知っている人のうち、『研究用を使用すべきでない』と知っている人は3割でした。
ネット販売解禁のニュースが報道されても、「医療用」と「研究用」の違いについては、なかなか理解が進んでいないのが現状です。
今回は、正しく検査を受けるための検査方法についてご紹介します。

※参照:第1回モニターアンケートテーマ「抗原検査キットの使用」

抗原検査キットの医療用と研究用の違いについて

医療用と研究用の抗原検査キットの大きな違いは、国の承認を受けているか受けていないかです。

医療用 研究用
入手方法 薬局 店頭、インターネット
承認 国が承認済み。体外診断用医薬品と明記。
現在約49社、121製品が承認されています。※11月11日時点
承認を受けておらず、研究用と明記。厚生労働省は製品の性能確認を行っていません。

医療用のうち、一般用抗原検査キット(OTC)として承認されたのは2022年11月11日時点で9種類※ですが、一般用として承認を取得する抗原検査キットは、今後も増える見込みです。

※参照:参照:新型コロナウイルス感染症の一般用抗原検査キット(OTC)の承認情報

検査方法

① PCR検査

② 抗原定性検査

③ 抗体検査

各検査の比較です。検査方法によって検体採取・検査方法・時間が異なります。

PCR検査 抗原定性検査 抗体検査
検査でわかること 現在感染しているかの有無 過去に感染したかの有無
検体 唾液、鼻腔咽頭ぬぐい液、鼻腔ぬぐい液 鼻腔咽頭ぬぐい液 血液
調べる対象 ウイルスの遺伝子 ウイルスのたんぱく質 血液中のたんぱく質
時間 数時間 約30分 約30分
精度 高い 低い(検体に含まれるウイルスが少ないと見逃してしまう) 検出には一定以上のウイルス量が必要
検査実施場所 検査機関で実施 検体採取場所(自宅でも可能) 検査機関で実施

① PCR検査

PCR検査

PCR検査は、コロナウイルスの検査だけではなく、医学や生化学の研究現場で古くから使用されています。
PCRは「Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)」の略で、DNAポリメラーゼという酵素を用い、採取した検体の遺伝子のDNA配列を増幅させウイルスの遺伝子を検出します。

以前は医療機関での検査がほとんどでしたが、最近ではインターネット上でもPCR検査キットが発売されています。ただし、厚生労働省が承認しているのはPCR検査キットではなく、抗原定性キットだけです。
精度はPCR検査の方が高いからといって、厚生労働省の承認がないキットを利用することはおすすめできません。

② 抗原定性検査

抗原定性検査

いわゆる抗原検査キットは、抗原定性検査にあたります。抗原定量検査では、専用の機器で抗原が検体にどれくらい含まれているか検査をするため、普及はしていません。
抗原定性検査は、検体を採取したら、専用の処理液(試薬)に浸します。浸し終わったら、検査キットに数滴たらして、判定時間(約30分)待ちます。検査キットの種類にもよりますが、その場で陽性か陰性か(もしくは判定不能が出た場合は再度検査)わかるので、非常に簡易的です。一方、検体を自分で採取するので、検体量が少ないとその分抗原量(=ウイルス量)も少なくなるため、陽性なのに陰性と出る場合があります。

陰性or陽性

一部の研究用抗原検査キットでは、「自宅で検査したら陰性だったのに、病院に言ったら陽性と診断された」こともあるようです。
厚生労働省から注意喚起があるように、「研究用」の抗原検査キットの使用はおすすめできません。

新型コロナの検査キット注意書き

※参照:新型コロナの検査キットは「研究用」ではなく国が承認した「体外診断用医薬品」又は「第1類医薬品」を選びましょう!

③ 抗体検査

抗体検査は、過去に感染したことがあるかどうかを調べます。ただし、ワクチン接種後は抗体ができるので、抗体検査では陽性と判定されます。
そのため、実際に感染したかどうかの判断は難しく、厚生労働省は体外診断用医薬品として承認を得た抗体検査はない、と公表しています。

・現在、イムノクロマト法と呼ばれる迅速簡易検出法をはじめとして、国内で様々な抗体検査キットが研究用試薬として市場に流通していますが、期待されるような精度が発揮できない検査法による検査が行われている可能性もあり、注意が必要です。

・また、現在、日本国内で医薬品・医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)上の体外診断用医薬品として承認を得た抗体検査はありません。
WHOは、抗体検査について、診断を目的として単独で用いることは推奨されず、疫学調査等で活用できる可能性を示唆しています。

参照:新型コロナウイルス感染症に関する検査について

一度できた抗体は永久的でなく、数か月で消失します。つまり、抗体検査が陽性だったからといって、二度と感染しないわけではありません。
これまでどおりの感染対策は必要です。抗体検査を受けるのは、疫学調査を目的とする場合がほとんどです。個人で検査を受けた場合、保険適用はなく、メリットはないといえるでしょう。

抗原検査キットの正しい入手方法

<薬局や自治体>

医療用として承認されている抗原検査キットは、保険薬局(処方箋に基づいた医療医薬品を取り扱い)で販売されています。保険薬局を併設していない、薬剤師が常駐していないドラッグストアで、医療用抗原検査キットは販売されていません。
店頭で抗原検査キットを購入する場合は、使用方法や検査後の注意点などを薬剤師が説明するようになっています。必ず薬剤師の説明を確認して、使用するようにしましょう。
陽性が出た場合は、薬局ではなく保健所等へ届けを出すこと、また、陰性であっても、薬局では陰性証明の発行は受け付けていないのでご注意ください。

診察

厚生労働省が公開している医療用抗原検査キットの取扱薬局リストにてご確認ください。
なお、在庫の保証はございませんので、事前に電話等で確認されることをおすすめします。
一方、各自治体では、その地域にお住まいの方を対象に無料検査を実施していますが、感染拡大傾向によってそれぞれ検査期間が設定されています。いつでも無料で検査が受けられるわけではないので、必ず自治体の案内をご覧ください。

内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室 : 各都道府県の無料検査事業サイト

<インターネット>

厚生労働省承認済みの一般用抗原検査キット(OTC)は、2022年9月にインターネットでの販売が解禁されました。しかし、一般用抗原検査キットは体外診断用医薬品=第1類医薬品。そのため、ネット販売であっても適正に使用するかどうか、薬剤師による確認が必要です。
また、第1類医薬品を販売するインターネット店舗は、「医薬品販売業許可証の内容」「薬店の管理及び運営に関する記載」「医薬品販売に従事する専門家の情報」について、サイトでの公開が必要です。これらの情報がなく第1類医薬品を販売することは禁止されているので、購入前に正規取扱店かどうかを確認するのも良いでしょう。
第1類医薬品を購入する場合、ご購入後に薬剤師から確認メールが届きます。薬剤師が「適正に使用」を確認できた時点で注文完了となり、製品が発送される仕組みとなっています。

インターネット

参考までに、2021年夏、神奈川県ではLINEを通じてアンケートにご回答いただいた県民に、医療用抗原検査キットを配布する事業を行いました。本事業の目的は、キットを使用して外来受診のひっ迫を軽減すること。
発熱等の風邪のような症状が出た際に、本キットの成果が出たようです。(現在は終了しました)

インターネット

抗原検査キットは、あくまでもセルフチェックで使用するためのものです。以下のような方々に向いているでしょう。

・コロナの症状が出ていないが、感染に不安を感じる方
・旅行・帰省、飲食、イベント等の社会経済活動を行う際、陰性結果が必要な方
・濃厚接触者(感染の可能性がある方)ではない方

※2022年11月追記

11月以降、全国で感染者数が増加傾向にあり、「第8波に入っている」「年明けには第8波のピークが予想される」等と、報道されています。
旅行割やイベントの開催、年末年始の帰省、さらに受験シーズンが控えています。今後は医療機関ではなくご自身で抗原検査を行うことが推奨されているため、感染が広がる前に自治体などでは政府に対し検査キットの十分な確保・供給や、ワクチンの接種促進をよびかけています。

・高齢者の方にうつさないためにも、年末年始の帰省で事前に検査しましょう
・受験を控えている学生やそのご家族が濃厚接触者になった場合、大学によって無症状で抗原検査が陰性であれば別室でテストを受けられるようです。(必ず募集要項や各大学Webサイトの入試情報ページを確認しましょう)いざというときのためにも、一般用の抗原検査キットを用意しておくことを推奨しています。

咳・のどの痛み・鼻水・発熱等の症状がある方は、必ず病院で診断を受けるようにしてください。
新型コロナウイルスの感染対策は、必要不可欠です。ご自身で医療用抗原検査が必要になったら、承認済みの抗原検査キットを入手するように心がけましょう。

よくある質問

抗原検査キットの医療用と研究用の違いは?

国からの承認を得ているかどうかが大きな違いとなります。
医療用は国からの承認を受けており、国が承認した検査キットは【体外診断用医薬品】又は【第一類医薬品】と表示されています。
入手は薬剤師がいる薬局、または自治体で配布している場合があります。

抗原検査キットはどこで入手できますか?

医療用の抗原検査キット(国からの承認済み)は保険薬局でお買い求めいただけます。
各自治体によって無料で検査を行っていたり、検査キットを配布している自治体もあります。
詳細はお住まいの自治体のご案内をご確認ください。

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