【骨粗しょう症とは?】なりやすい人・原因と予防について

目次

骨粗鬆症(骨粗しょう症)は、骨に含まれるカルシウムやたんぱく質が減少して骨の中がスカスカになり、ちょっと転んだだけでも骨折しやすくなる病気です。
2015年に発表された「骨粗鬆症ガイドライン」によると、日本では約1300万人の患者数がいるとされており、これからの超高齢者社会に向けて、患者数は増加するとみられています。

骨粗しょう症とは

骨の役割

骨は私たちの身体を支えるだけではなく、運動の支点、カルシウムの貯蔵、造血、脳や体内器官の保護、といった役割があります。

身体を支える 脊柱(せきちゅう)で支える
脳を守る 頭蓋骨(ずがいこつ)で守る
内臓器官を守る 肋骨(ろっこつ)で守る
運動の支点 筋肉と骨がつながって、関節を支点として運動する
造血機能 骨髄(こつずい)で赤血球・白血球の血液細胞を作る

このように、骨は私たちが生きていく中で必要不可欠だとわかります。
では骨はどのような成分で、どのような構造から成り立っているのでしょうか?

骨の構成と形成サイクル

骨の主成分は、リン酸カルシウムとたんぱく質(コラーゲン)です。
これら無機質の成分が骨の中に含まれる量を骨量といい、単位面積当たりの骨量を骨密度といいます。

  • ・骨量 骨の中の無機質(リンやカルシウム)の量
  • ・骨密度 単位面積当たりの骨量

そして、骨の内部には骨を吸収する「破骨(はこつ)細胞」と骨を形成する「骨芽(こつが)細胞」が働いています。

  • ・破骨細胞 骨を吸収する細胞=骨を壊す細胞
  • ・骨芽細胞 骨を形成する細胞=骨を作る細胞
骨代謝のサイクル

まず、破骨細胞が古い骨を破壊します。もちろん壊したままではありません。骨芽細胞がコラーゲンなどのたんぱく質を生成し、そこにカルシウムが吸収されて骨を形成するのです。
このサイクルは骨代謝と呼ばれ、若年層は約3年サイクル、高齢になると5~10年のサイクルで行われるといわれています。

骨粗しょう症の原因

破骨細胞と骨芽細胞は、バランスよく代謝されるのが理想的です。しかし、加齢により破骨細胞の働きが骨芽細胞より上回ってしまうと、そのバランスが失われます。
破骨細胞の働きが強くなったら、骨中のカルシウムがどんどん減少します。また、骨芽細胞の働きが弱くなると骨を作ることができず、骨量・骨密度が減ります。そして、骨の内部がスカスカになる、すなわち骨粗しょう症の状態になってしまいます。
特に、女性はもともと男性よりも骨量が少ないことと、閉経前後に骨密度が低下することから、骨粗しょう症は女性に顕著に現れるようです。

健康状態の骨のイメージ
骨粗しょう症状態の骨のイメージ

なぜ、破骨細胞と骨芽細胞のバランスが崩れ、骨密度が減ってしまうのでしょうか。
それは、加齢によるホルモンバランスの崩れ(特に女性ホルモンであるエストロゲン)、運動不足、閉経など理由はさまざまです。また、生活・食習慣の変化や遺伝も要因のひとつとされています。

症状

骨粗しょう症で骨折しやすい部位は背骨、手首の骨、太ももの付け根の骨(大腿骨頸部骨折)です。

骨折のイメージ

例えば、「背中や腰が丸くなる」「背が縮む」「重い物を持つと腰が痛くなる」といった症状は、背骨の一部が骨折すると発生します。痛みを感じにくいので骨折の自覚がなく、「年をとったから」と思いがちです。
腰痛が気になり始めた方、中でも閉経前後の女性の方は、骨粗しょう症の可能性もあるので、病院に行って相談することをおすすめします。

代表的な骨粗しょう症の症状

  • ① 圧迫骨折(ちょっと転んだだけで激痛)骨が折れる
  • ② 長時間立つと腰が痛くなる
  • ③ 腰が曲げられない
  • ④ 重たい物を持ち上げられない
  • ⑤ 身長が縮む

どんな人がかかりやすいのか

では、どんな人が骨粗しょう症にかかりやすいのでしょうか?よく挙げられているのが下記のような方です。

  • ① 閉経前後の女性
  • ② 過去に骨折したことがある人
  • ③ 運動不足の人
  • ④ 喫煙習慣のある人
  • ⑤ 飲酒習慣のある人
  • ⑥ 両親が骨粗しょう症、または骨折したことがある人
  • ⑦ 日焼け対策をしている人(カルシウムの吸収が不足)
  • ⑧ 過激なダイエット経験のある人
  • ⑨ ステロイド系薬を服用している人
  • ⑩ 生活習慣病(糖尿病、動脈硬化、腎臓病など)の人

特に⑦⑧は、若い頃から極端な日焼け対策やダイエットを繰り返すとカルシウムの吸収が行き届きません。結果、骨形成の骨芽細胞がうまく機能しなくなり、骨粗しょう症になる可能性が高くなります。
このようなケースを防ぐためにも、若いうちからバランスのよい栄養を摂って健康的な生活を送るように心がけることが大切です。

検査方法

骨粗しょう症の検査は骨密度を測定します。測定方法については、以下の3種類が挙げられます。

超音波法 かかとに超音波をあてて測定する。かかとの骨の中に超音波を通してその速度や量を計測するが、骨量の測定ではないので診断には用いない。
MD法 手の横にアルミニウム板を置いて、X線を撮影。画像の濃淡の差で骨量を測定する。
DXA法 腰椎や大腿骨に2種類のX線を照射して骨量を測定する。

その他にも、レントゲン検査、血液検査、MRIなどを行ったうえで、身長を計測して若かった頃とどれくらい縮んでいるか調べます。

なお、女性は40~50歳を過ぎたら、健康診断等で骨密度測定を受けるようにして予防に努めることをおすすめします。
多くの自治体では40歳以上の女性に対し、5歳毎の節目検診として骨粗しょう症検診を実施しているので、機会があれば最寄りの保険所のウェブサイトなどをご確認ください。

健康な骨と骨粗鬆症の骨のイメージ

治療と予防

治療

骨粗しょう症の治療では、骨密度の低下を抑制して骨折や腰痛を防ぎます。治療には薬物療法、食事療法、そして運動療法があります。
骨粗しょう症の治療薬は、骨吸収を抑制する薬、骨形成を促進する薬、骨に必要な成分を補填する薬、骨代謝をサポートする薬などがあります。飲み薬や注射のように、タイプはさまざまです。医師と相談して、ご自身にあった薬物治療を行いましょう。

もちろん、薬物治療を実施しながら、普段の食生活やライフスタイルを改める必要もあります。

食事療法

「骨を強くする=カルシウムを摂取する」とイメージするかもしれませんが、実は過剰にカルシウムを摂取するだけでは、骨は強くなりません。エネルギー源となる栄養素、特にビタミンDやビタミンKをバランスよく摂取することも必要です。

チーズと小魚と牛乳
カルシウム 骨の主成分 乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど)ひじき、煮干し、大豆製品
ビタミンD カルシウムの吸収を促進 きのこ類、卵黄、鮭、貝類
ビタミンK カルシウムの吸収を促進や、尿中の排出を防ぐ きゅうり、小松菜、ブロッコリー、干しわかめ、納豆

一方、カルシウムの吸収を妨げる成分もございます。
これらを含む食品は、極力控えるように心がけましょう。

リン 加工食品、スナック菓子、インスタント食品に多く含まれる
食塩 塩分を摂りすぎると、カルシウムが尿に吸収されて排泄されてしまう
カフェイン コーヒー、紅茶などに含まれる
アルコール ビタミンDの働きを悪くする

最近では、骨密度を高めるための機能性表示食品のドリンクやサプリメントが多く発売されています。
食事だけでカバーできない場合は、こういった健康補助食品で補ってもよいでしょう。

毎日1週間牛乳を飲み続けたからといって、骨粗しょう症は治りません。それだけ、骨を形成するには時間が必要なのです。毎日こつこつ、カルシウムなどの骨の形成に良い栄養素を取り入れることを意識するようにしましょう。

生活習慣

身体を動かして運動すると、骨に負荷がかかります。その時、骨を形成する骨芽細胞が活性化し、カルシウムが骨に吸収されやすくなるので、軽い運動をするだけでも骨粗しょう症の予防につながります。
また、運動すると筋肉が動いて筋力がつきます。筋力やバランス力がつくと転倒防止にもつながるので、積極的に運動を取り入れるようにしましょう。

運動する2人の女性

ウォーキングやサイクリング、慣れてきたらジョギングや水泳などがおすすめです。あまり体を動かす機会がなかったシニアがいきなり運動するのは、危険を伴います。
まずは家の近所を30分程度歩いて徐々に距離や時間を増やしていく…これを毎日の日課にすることで、骨粗しょう症の予防だけではなく、その他の生活習慣病の予防にもつながるでしょう。

カルシウムの吸収促進には、ビタミンDが有効です。ビタミンDは、食品から摂取するだけではなく、実は日光を浴びることでも体内に作られるのです。(ビタミンDは別名「サンシャインビタミン」とも呼ばれています)
日光からビタミンDを補うには、夏場なら30分、冬場なら1時間程度屋外で過ごすことが推奨されています。ただし体調次第では、寒い冬に1時間屋外で過ごして風邪をひいたり、暑い夏に熱中症になったりするリスクが高まるので、注意が必要です。

今や男女問わず、年をとると骨粗しょう症になる可能性が高くなってきました。痛みを伴わないので、知らず知らずのうちに骨粗しょう症にかかってしまう傾向があります。高齢になってからの骨折は治りも遅く、さらに寝たきりになると介護が必要となります。
加齢や腰痛を感じたらできるだけ早めに骨密度検査を受けて、適正な治療や生活習慣、食事を取り入れて予防に努めましょう。

よくある質問

骨粗しょう症になりやすい人は?

下記が骨粗しょう症になりやすい人の特徴です。

  • 閉経前後の女性
  • 過去に骨折したことがある人
  • 運動不足の人
  • 喫煙や飲酒習慣のある人
  • 両親が骨粗しょう症、または骨折したことがある人
  • ステロイド系薬を服用している人
  • 生活習慣病の人

また、若い方でも日焼け対策や過激なダイエットを繰り返していると、カルシウムの吸収が行き届きにくくなり、骨粗しょう症になる可能が高くなります。

骨粗しょう症を治すには?

主な療法は3つございます。

  • ・食事療法・・・カルシウム(牛乳やチーズ等)、ビタミンD(きのこ類、鮭、貝類等)、ビタミンK(ブロッコリー、納豆等)の摂取
  • ・運動療法・・・身体を動かし運動すると骨に負荷がかかり、骨を形成する骨芽細胞が活性化。カルシウムが骨に吸収されやすくなる。
  • ・薬物療法・・・治療薬として骨吸収を抑制する薬、骨形成を促進する薬、骨に必要な成分を補填する薬、骨の代謝をサポートする薬など。医師とご相談して、ご自身にあった薬部療法を行ってください。

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