聴診器の選び方と使い方【構造と仕組み】

目次

聴診器とは

聴診器をかけた女性

聴診器(Stethoscope)は、病院での受診や健康診断の検診時などで用いられる道具で、一般医療機器に該当します。医療従事者にとって必要不可欠な道具のひとつであり、医療現場では聴診器をステートと呼ぶこともあります。
聴診器は人間の身体の一部に触れ、チューブから伝導音を聴き、その状態を確認する道具です。使うシーンによって聴診器は多種多様であり、さまざまなメーカーが用途に合わせた聴診器を製造販売しています。

では、聴診器は具体的に何を聴き取るのでしょうか?主に心音と呼吸音です。
心音は、心臓の弁が閉じる際に発する音です。呼吸音は、患者に息を吸ったり吐いたりしてもらった状態で聴診器をあてて、異常音や音の強弱を聴き取ります。また、腹部にあてて腸の動きを聴くことがあるように、心音と呼吸音以外にもさまざまな部位の音を聴いて診断します。
それでは、聴診器について詳しくご紹介します。

聴診器の歴史

地球儀

いつから聴診器を使うようになったのでしょうか?
遡ること古代ギリシャ時代、医師ヒポクラテスは病がある患者の体内に異常音があることをつきとめました。しかし聴診器がない時代は、直接皮膚に医師が耳をあてることしかできませんでした。
その後1816年、フランスの医師ルネ・ラエンネックが聴診器を発明。当時の聴診器は両耳ではなく片耳だけの「単耳型聴診器」でしたが、直接聴くよりも精度が高く世界中に広がりました。その約30年後の1848年(江戸時代)には、オランダの軍医モーニケが長崎に持ち込んだことから、日本にも広がったとされています。
そして1852年には、現在のような双耳型の聴診器が発明されました。これにより精度がさらに改善され、世界中に広がり今に至っています。

聴診器の構造と種類

構造

聴診器は、身体の皮膚に直接触れるチェストピースで内部の音を拾います。チェストピースには音を拾うための「振動板」が付いており、この振動板の膜をダイアフラムといいます。また、聴診する面が二つある聴診器もあり、このチェストピースの振動板の上にある小さな円形部分をベル型といいます。ベル型の面は、周囲の淵がゴムで囲まれているのも特徴のひとつです。
実際に使う際には、拾われた音がゴムのチューブを通って両耳に伝わるため、聴き取れるという仕組みです。耳に入れるイヤーチップ(イヤーピース)はゴム製で、耳にフィットしたものを使用します。

聴診器

シングル型

シングル型聴診器

ダイアフラム面のみの聴診器をシングル型(シングルタイプ、シングルサイド)といいます。比較的大きな音を聴くためによく使用されます。
また、血圧を測定するときは腕帯に入りやすいシングル型がよく用いられています。

ダブル型

ダブル型聴診器

チェストピースにダイアフラム面とベル面を備えた聴診器がダブル型です。ベル面の周りはゴムでカバーされています。
用途によって使い分けができ、高音はダイアフラム面、低音はベル面で聴き取ります。また、心音はダイアフラム面とベル面の両方で聴き取ります。

電子聴診器

従来の聴診器はボリュームを上げ下げできませんが、音響増幅機能を備えた電子聴診器はより小さな音を聴きとることができます。音のデータ化が可能なので、記録した音を後から聴きなおすことも可能です。
また、電子聴診器は遠隔診療に役立っています。患者もしくは訪問看護師がチェストピースを患部にあて、医師はその音をBluetooth(ブルートゥース)やサーバーに飛ばして確認し、診察します。今後、オンライン診療での幅広い活用が期待されています。

聴診器の用途

血圧測定

聴診器を使った血圧測定

血圧を測定する際、聴診器で血管音を聴き取って測定することがあります。腕帯に圧をかけると血液の流れが止まり、血管音が無音になります。これを利用した血圧測定を「聴診法」といいます。 聴診法では、聴診器で血管音を確認することで、最高血圧と最低血圧のタイミングを測定します。血圧測定にはシングル型の聴診器が適しており、聴診器を使う主な血圧計は水銀血圧計、マーキュリーフリー血圧計、アネロイド血圧計です。(最近は水銀レスがほとんどです)

呼吸器系

呼吸器系の聴診では患者の肺で起こっていることを把握できます。

循環器系

心音を確認します。循環器系は音が小さいので聴き取りが難しいケースも。なるべく正常時と異常時を聴き分けられるよう、高性能のダブル型などを使うのが良いでしょう。

消化器系

主に腸の音を確認します。消化器内で内容物やガスが流れているときに音が発生しますが、その音を腸蠕動音(ちょうぜんどうおん)と言います。キュルキュル、ゴロゴロ・・といった音が常に鳴るのではなく、5~15秒毎に鳴ります。

産科

聴診器で胎児の心音を聴く

妊娠中期(5か月~)以降、胎児の心音や動作音を聴くことができます。夫婦や家族で生まれてくる赤ちゃんの音を聴くとワクワクしますよね。
また、赤ちゃんが生まれてからも体調把握に役立ちます。赤ちゃんの正常時と異常時の呼吸数が聴き分けられるようになれば、何か異常を感じた際にすぐかかりつけ医に相談できるからです。

その他

聴診器は人間の診察だけではなく、動物の診察にも使用します。

聴診器を使って動物の音を聴く

動物は具合が悪くても、どこが痛いのか、悪いのか説明することができません。そのため獣医は、聴診器で動物の心音や呼吸音を聴いて、何か異常がないかを確認します。なお動物は毛が多く身体も小さいので、動物専用の聴診器がありますが、小児・新生児用の聴診器を使用されることが多いようです。
さらに聴診器は、実は医療現場以外でも使用されます。例えば、自動車のエンジンやベアリングなどの異音を聴き取るために、専用の聴診器(サウンドスコープやメカニックスコープ)があります。その他、配管の点検で異音を検知して亀裂の有無を調べるのに、聴診器(用途によっては先が棒になっている聴診棒)を使います。

聴診器の手入れや寿命

お手入れ方法

毎日使用する聴診器。性能維持のためにも、定期的に手入れをして末長く使用したいものです。また患者の皮膚に直接触れるので、消毒も必要です。(滅菌は不可)
まず、アルコールやせっけん水に浸した綿で本体を清拭し、よく乾かしましょう。プラスチック部分や、チューブ・ベルの縁を覆うゴムは、経年劣化だけでなくアルコールによっても劣化する場合があるので、パーツ毎の手入れは注意が必要です。もし見えない亀裂が入ってしまうと、正しく音が聴き取れなくなってしまいます。
また、普段イヤホンを付けていると耳垢が付着していることがあります。聴診器も同様、直接耳にはめるので、イヤーピースに耳垢が付きやすいもの。定期的に綿棒などを使い、耳垢や埃といった汚れを取り除きます。
聴診器のパーツは取り外しが可能です。メーカーによってはパーツの交換を行っているので、商品に付属する取扱説明書を確認しながら、取り外しや取り付けしましょう。

買い替え時期は?

聴診器の使用頻度や保管状況によって、寿命は変わります。ゴムの劣化、チューブのヒビや汚れ、耳管のバネの緩みなどを感じたら、修理や買い替えのタイミングです。
交換で済むこともありますが、パーツによっては新品を買うのと変わらない費用になってしまう場合があります。定期的に手入れをしながら聴診器に傷や緩みがないかなど確認して、常時正確に音を聴き取れるように使用しましょう。

代表的な聴診器ブランド

聴診器を製造販売しているメーカーはいくつかあります。聴診器の歴史が長いものもあれば、日本製にこだわったものもあり、製品のカラーバリエーションや性能も多々あります。

メーカー 特徴 リンク先
リットマン 1960年代前半にアメリカのリットマン博士が聴診器の音響を改善する特許を取得。世界的な聴診器ブランド。 メーカーサイト
ケンツメディコ 日本国内で30年以上の歴史をもつ。部品から製品まですべて国内生産 メーカーサイト
フォーカル 1982年創業、部品から製品まですべて国内生産 メーカーサイト

おすすめ商品

スリーエムジャパン リットマン ステソスコープ クラシックⅢ 69cm
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価格: 22,470円(税込み)
eastsidemed es 聴診器 SWS
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よくある質問

聴診器のシングル型とダブル型の違いは?

  • シングル型はダイアフラム面のみ。比較的大きい音を聴取するために使用する。血圧測定ではシングルタイプがよく用いられる。
  • ダブル型はダイアフラム面とベル面の二つを兼ね備えており、聴診の用途により使い分けができます。(主に高音はダイアフラム面型、低音はベル型)

聴診器で何を測定するの?

血圧を測定する時の血管音、呼吸器系、循環器系、消化器系など。それぞれ異常が無いかなど聞き分けます。また、医療以外でも車のエンジンや配管の点検時などに専用の聴診器を用いて、異常の有無を診断します。

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