はじめに
親指(母指)は生活の上で、非常に大切な部位です。「イイネ!」のサインをはじめ、実際物をつまんだり、つかんだり、絞ったり、握ったり、弾いたりするのに必ず親指を使います。そのため、ケガをすると生活に支障をきたします。特に、スマホやPCを使う機会が増えているので、手指の痛みは仕事や生活全般に影響するのは言うまでもないでしょう。本ページでは特に親指の痛みについて、症状や原因、テーピングやサポーターを使う処置についてご紹介します。
参考までに、医学的には指の呼び方は異なります。英語と共通したワードが多く見受けられますが、親指(母指)は英語ではthumbで、唯一fingerがつきません。
| 一般的な呼称 | 医学用語 | 英語 |
|---|---|---|
| 親指 | 母指(ぼし) | thumb |
| 人差し指 | 示指(じし) | index finger |
| 中指 | 中指(ちゅうし) | long finger |
| 薬指 | 環指(かんし) | ring finger |
| 小指 | 小指(しょうし) | little finger |

親指の痛み、その症状について
幼少期、遊んでいてぶつかった拍子に、突き指になったことありませんか?指を引っ張る、冷やすなどの応急処置をすれば、翌日には痛くなくなっていた・・という経験があるかもしれません。※突き指は安静にしなければならないので、絶対に引っ張ってはいけません。
それが大人になると、ボール遊びが減り、スマートフォンやPCのマウスを持つことが増えました。手指を酷使する職業(美容師、スポーツ選手、調理師、音楽家など)が原因で痛みを伴うことも。ではどんな痛みがあるのでしょうか?
親指の痛み
代表的な親指の痛みの症状です。思い当たる節はありませんか?
- ●親指が腫れたような痛み、熱がこもった状態になる
- ●グーパーグーパーすると痛み、違和感がある
- ●何かを持ったり、つかもうとすると痛くて曲げられない
- ●タオルを絞ると痛い
- ●瓶の蓋が回せない(開くことができない)、痛い
- ●親指がビリビリとしびれている
「(普段の生活に影響がない程度に)痛みは我慢できる」「すぐ治るだろう」と思って放置すると、痛みが慢性化、重症化するケースもあります。数日で治るケースもありますが、痛みがひかない場合は速やかに整形外科を受診しましょう。
代表的な親指の付け根の症状についてご説明します。
腱鞘炎(ドケルバン病)
親指を動かした時に痛みを感じるのが腱鞘炎です。腱鞘炎は親指側にある腱鞘を通過する短母指伸筋腱や長母指外転筋腱に炎症が起こると、腱鞘の部位で動きが悪くなります。そうするうちに親指側が痛みをおこし、腫れあがり、動かすと親指を動かすのが困難に。

腱鞘炎の原因は手指の酷使、特に親指の使い過ぎによるものです。スポーツ選手やピアニスト、美容師、縫い子(縫製)のような手に職を持つ人に多くみられましたが、最近ではマウスやゲーム用のコントローラー、スマートフォンを使う機会が増えているので、職業問わず腱鞘炎による痛みを感じる人が増えています。
母指CM関節症
何かをつまんだり、瓶の蓋を締めるのに回そうとすると親指の付け根に痛みを感じる時があります。

親指の付け根にあるCM関節に負担がかかりすぎると炎症を起こす、変形性関節症のことを母指CM関節症といいます。最初は付け根に痛みを感じる程度ですが、さらに進行した場合、親指の指先の関節が曲がり、手前の関節が反ってしまう「白鳥の首」のように親指が変形しまうこと。例えば蓋を閉める時に痛みを感じるようになったら注意が必要です。気になるようであれば整形外科へ受診するようにしましょう。
ばね指
指を曲げたり伸ばしたりすると思うように伸びず、ひっかかっているような感覚に。そして突然、カクカクと伸びて、ピストルで引き金をひくような動きになることを「ばね指」といいます。英語ではTrigger Finger(トリガーフィンガー、トリガーとは引き金の意味)とよぶことも。ばね指は親指だけではなく、中指や薬指にも起こりえます。

腱鞘炎から腱の動きが鈍くなり、指の付け根に痛みや腫れが生じます。これを放っておくとばね指となり、指が動かなくなってしまうので、「腱鞘炎はすぐ治るだろう」は禁物です。ばね指も腱鞘炎と同じく、指をよく使う職業やスポーツをする人に多いようです。
手根管症候群
手根管症候群は手のしびれです。最初は中指にしびれを感じるようになりますが、徐々に親指半分、人差し指、薬指の半分に広がってきます。しびれは明け方に現れることが多く、症状がひどくなると親指の付け根の筋肉が小さくなってしまいます。そのため細かい作業ができなくなり、力が入らないので物を落としやすくなります。わかりやすい例えとして、親指と人差し指で〇を描くOKサインができなくなってしまうほどに。

突発性が多く、手の使いすぎが原因とされています。
その他
●痛風は足の親指をはじめ、足の甲や関節に激痛が走ると思われますが、実は親指の付け根や手関節でも痛みが起こることがあります。
●関節リウマチは手首の付け根にある関節が壊れることにより力が入らなくなります。一度関節が壊れてしまうと元に戻らないので、医師の診断のもと治療を続けなければなりません。
このように、「根を詰めたから、ちょっと親指が痛いけどすぐ(痛みは)引くだろう」「以前から知らず知らずのうちに治っていたから大丈夫」と思い込みは禁物です。日常生活に支障をきたす場合もあり、テーピングやサポーターの常時着用、手術や長期的な治療が必要になる場合もあるので、早め早めの受診を。
親指が痛む原因
親指が痛くなる原因として下記が挙げられます。
関節が原因
手首や手指は小さな骨がいくつもつながって関節で成り立ちます。細かく小さい骨がいくつも連なっているからこそ、可動域が広がり、細かい動きに対応することができるのです。親指は上から母指IP関節~MP関節~CM関節で繋がっています。この関節の部位の痛みや腫れの状態によって、どんな疾患かを想定することができます。

CM関節症や関節リウマチ、痛風はこれら関節の特定の部位が原因で発症します。例えば親指の付け根が痛いと感じたら、CM関節症の可能性が高くなります。
腱が原因
腱とは手や指を動作させる筋肉と骨を結んでいる組織で、これにより手指や手首を動かすことができます。腱は腱鞘に包まれているのですが、この腱と腱鞘が炎症を起こすと腱鞘炎やばね指の原因になります。
神経が原因
手首の内側(手のひら)には、正中神経と腱が通るトンネルのような手根管(しゅこんかん)があります。正中神経が圧迫されるとしびれや痛みを生じ、手根管症候群を発症します。
女性が発症しやすいのはなぜ?
母指CM関節症や手根管症候群など、手指の疾患は男性よりも女性に多くみられます。特に更年期を迎えた女性が多いようで、加齢や女性ホルモンの分泌量低下が原因ではないかといわれています。女性ホルモンのエストロゲンは女性の生殖器官の発達の他に、骨、血管、関節を健康に維持するために必要なホルモンです。加齢に伴いエストロゲンは減少します。

更年期だけではなく妊娠や出産後の女性もホルモンバランスが変化しているので注意は必要です。特に産後ママは赤ちゃんの抱っこ、おむつの交換、授乳といった育児によりこれまで以上に手指を酷使する機会が増えるので、腱鞘炎を発症しやすくなるのです。
処置・手当について
このように親指の付け根の痛みは、いくつかの要因によって引き起こされます。病院での治療は湿布薬やギプス、テーピングやサポーターを使う保存療法が多いようです。炎症を抑えるためのステロイド注射や場合によっては手術をすることも。ここではテーピングやサポーターについてご紹介します。
サポーター
親指専用のサポーターでしっかり固定することにより、炎症部分を動かすことなく痛みが緩和されて、日常生活を送ることができます。市販されている親指サポーターは親指からその下の手首を固定するので、親指の付け根や手首を守ります。

サポーターはテーピングに比べて、厚みがあり、黒いサポーターが多く見た目からして目立つかもしれません。またテープに比べると割高です。ただしテーピングに比べて簡単に装着できること、繰り返し使えることもメリットであるでしょう。
テーピング
ではテーピングはどうでしょうか。テーピングは比較的安価で、サポーターに比べて固定する力加減が自由にコントロールできます。プロアマ問わずスポーツ選手でテーピングして競技に挑んでいる姿を見たことがあると思います。スポーツ選手に怪我は禁物です。テーピングは関節周囲をケアするために巻いて、余計な可動域を抑えることができ、怪我の防止に役立てています。もちろん怪我をした後の応急手当やテーピングをすることで同じ部位の怪我の再発を予防することもできます。
一方、テーピングは腱鞘炎や母指CM関節症やばね指のような疾患がある場合の固定にも使用できるので、使えるようになると幅広い用途で活用できるでしょう。

さらに、テーピングテープには用途や状態に合わせて種類が豊富です。どのようなテープを選べばよいでしょうか?
テーピングテープの種類
テーピングテープは「伸縮性があるもの・ないもの」により大きく分かれます。
- 伸縮性があるもの:可動域の可動制限、固定や圧迫
- 伸縮性がないもの(非伸縮):しっかりとした固定や圧迫に
伸縮性があるテープはキネシオロジーテープともいいます。キネシオロジー(kinesiology)とは、運動学をベースにした筋肉の調整法を意味します。キネシオロジーテープはテープの伸縮性を生かして、筋肉の動きを支えながら可動域をしっかりサポートします。
貼り方は筋肉に沿って貼ります。運動する方には汗に強い撥水性があるものがおすすめです。
伸縮性がないテープはしっかり固定できるので激しいスポーツをする方に向いています。
テーピングテープの貼り方
テーピングテープの貼り方について、ここではスポーツではなく親指の付け根のケアについてご説明します。
この動画のように、痛みがある親指を内側から外側に向けて巻いていきます。手首の周りを1周できたら、手の平側から再度親指の周囲を1周します。テープを半分程度ずらしながら、2―3回繰り返します。最後手首の周りも2―3回巻いて終わりです。
なお、他にも親指の付け根テーピング方法はいくつかございます。実際動画や写真を見ながら、自身でしかも片手で巻くのは難しいので、整形外科の医師にセルフテーピングの方法を相談してみるのも良いでしょう。
一方、親指専用の巻くだけのテープが市販されています。こういったテープを使えば突然の痛みに対応でき、すぐテープで固定することができるので安心です。
よくある質問
なぜ親指の付け根だけが痛くなるのでしょうか?
他の指がケガがしにくいという訳ではありませんが、親指(母指)は物を「つかむ」「つまむ」「握る」など動作をするうえで、力が入り動きがある重要な指です。私たちが普段の暮らしや生活にこの動作は欠かせず、他の4本の指に比べて動きやすく力が入る指です。そのため親指は5本ある指の中でも最もケガや痛みを伴いやすい指なのです。
テーピングやサポーターは付けっぱなしにしてもよいのでしょうか?
サポーターは入浴や就寝前にはすぐ外せますが、テーピングの貼り替えは大変です。就寝中は指を動かすことがないので、無理に貼る必要はありません。かえって肌に負担がかかる場合もあるので、寝ているときは剥がした方良いでしょう。ただし症状によっては数日間は安静にしなければならない場合もあるので、医師に確認を。



