「帝王切開」はご存知のとおり、何かしらの問題により、赤ちゃんが産道を通って、お母さんの膣から出てくる経腟分娩が難しいと診断されたら、下腹部を切開して赤ちゃんを取りだす出産方法です。 厚生労働省「平成 29 年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」※によると、一般病院での帝王切開率は1990年には11.2%だったのが2017年には25.8%と増加傾向とのこと。 すなわち、5人に1人が帝王切開で出産していることになります。帝王切開が増加傾向にある背景は初産の高齢化や不妊治療による経腟分娩のリスク、胎児適応の増加、また陣痛などの痛みへの不安が高まっているなどが考えられます。 そして医療の進歩により帝王切開は母体・赤ちゃんにとって安全な手術となり、予め計画的に行う「選択的帝王切開術」が増えていることが原因といえます。 しかし、帝王切開が増加している一方で、帝王切開後の心身ケアはあまり知られていません。 帝王切開によって無事に分娩したとしても、お母さんによっては「思い通りにならなかった」「自分で出産できなかった」など、自分を責めたり、心理的に自信を持てなくなったりする場合があるようです。 医療機関によっては、帝王切開を受けた人に対してサポートを行い、経験者同士で気持ちを共有し合う場を設けて、きめ細かいフォローを行っています。 もちろん、お母さんに対してご家族のサポートも必要ですし、一人で考え込んでしまうと、育児にも影響するので、産科医や助産師に相談してみると良いでしょう。 では、心身の「身」の方はどうでしょうか。よく帝王切開後、麻酔が切れた後の痛みは相当なものと聞きます。 ベッドで体の向きを変えるなどほんの少し動いただけでも痛みを伴います(個人差があります)。とにかく無理をせず安静にすることが第一。 早く赤ちゃんのお世話をしたいのは山々だと思いますが、医師や助産師からの指導に従って、少しずつ体を動かし育児に慣れていきましょう。 痛みは数日で収まってきますが、帝王切開で開いた傷口のケアを育児と並行に始めなければなりません。このコラムでは帝王切開後の傷あとケアについてご紹介します。帝王切開とは
帝王切開後の「おなかの傷あとは勲章」と言われることがあります。とはいえ、おなかに傷があるのは、水着や温泉、エステなど、おなかを見せる機会があると、躊躇してしまいますよね。 毎日気にしてしまうものではなく良い思い出として残しつつ、少しでも傷あとのダメージを少なくするために、最近は傷あとケアが一般的になりました。 では、どうして傷が残るのでしょうか? これは帝王切開に限らず、術後に皮膚を縫い合わせた傷は、一般的に約3日後には傷口が閉じます。傷口が閉じてからは、赤い腫れや痛みが生じる炎症期に入ります。 その後は、新しい細胞が傷あとを埋めていき、3週間~1年後には傷あとは肌の色に近くなって残ります。 体質や物理的な刺激が傷あとに加わると、ミミズ腫れのように傷あとが赤く盛り上がる肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)という症状になり、ますますかゆみや痛みが広がってしまいます。 さらに悪化すると、ケロイド状となり赤みと傷あとが盛り上がってしまい、余計に傷あとが目立ってしまうことがあります。 ケロイドは自然治癒によって消えることが少ないと言われているので、ほっておいても赤く盛り上がった傷あとがなくなることはありません。 肥厚性瘢痕やケロイドの症状によって治療方法は異なりますが、レーザー治療や手術、放射線治療など大がかりな治療が必要になる場合があります。そうならないためにも、傷あとケアは必要です。 体質によるもの:遺伝、女性ホルモン、高血圧によりケロイドができやすいという報告があります。※ 物理的刺激によるもの:紫外線、傷あとや周りの皮膚の伸縮、衣類や下着との摩擦による炎症、傷あとを保護しているテープを剥離する時の刺激などがあげられます。 体質改善はすぐに適応できませんが、物理的刺激をいかに抑えるかが、帝王切開後できる傷あとを目立たなくするための重要ポイントです。 さすがに摩擦を避けるために下着を付けないというわけにはいきません。また、生まれたばかりの赤ちゃんの育児で忙しいところに、毎日皮膚科や外科に通院する必要もありません。 すぐに始められる傷あとケアがあります。どうして傷あとケアが必要なの?
どのように、傷あとをケアして目立たなくするのでしょうか。さきほど傷あとが残る原因の物理的刺激について と、紹介しました。傷あとケアはこの物理的刺激を守るために
・傷あとや周りの皮膚の伸縮を防ぐ この3つのケアが必要です。 代表的なケアのひとつが「傷あとテープ」です。 テープといえば病院の処置で使うガーゼの上から貼る不織布のテープ、整形で使うようなテーピング、また絆創膏を想像されるかもしれませんが、意外に知られていないのが傷あと専用の「傷あとケア」です。 以前は病院の売店や産科でしかなかなか手に入れることができませんでしたが、最近では大型のドラッグストアやインターネットでも簡単に手に入るようになりました。 紫外線から守り、乾燥や摩擦から守るのは普通の絆創膏でもケアできそうですが、絆創膏では皮膚の伸縮を防ぐことができません。 手術後の傷あとはこの皮膚の伸縮を防ぐかが重要です。傷あとテープは縦横の伸び縮みを抑制しながら、傷口を守ってくれるので、他の絆創膏とは違う作用をしてくれます。傷あとをケアするには
物理的刺激によるもの:紫外線、傷あとや周りの皮膚の伸縮、衣類や下着との摩擦による炎症、乾燥、傷あとを保護しているテープを剥離する時の刺激
・傷あとを紫外線から守る
・乾燥や摩擦の炎症、剥離時の刺激から守る
傷あとテープの使用方法 傷あとテープはいくつかのサイズがあります。傷あとの大きさを確認してサイズを選んでください。 皮膚を清潔にして乾いた状態になったら、傷あとをテープ中央にあわせて、テープを伸ばさないように注意して貼り付けます。種類にもよりますが、およそ7日程度で交換するようになっています。テープは貼ったまま入浴も可能です。 では、いつまで貼り続けるのでしょうか? 転んだ時の擦り傷や包丁で指を切ってしまったような傷は外的から守るために数日で済みますが、傷あとテープは傷あとが肌の色に近くなるまで3か月から1年は貼り続けるようにしましょう。 毎日貼り替えるのを1年続けるのは面倒ですが、毎週日曜に替えるなど決めておくと、うっかり忘れることもなく習慣化することができます。 シリコンシートの場合も、サイズがいくつかあるので、傷あとの大きさを見ながら適したサイズを選んでください。使い方は、まず傷口を清潔にして水分を拭き取ります。 シートを取りだしたら、粘着がある面を傷に直接貼り付けます。傷あとに接着する側は汚れるので、毎日の入浴時にボディソープなどで洗浄してすすいだらよく乾燥させます。 ※ドライヤーは使わず自然乾燥です。毎日洗い替えは面倒かもしれませんが、粘着力がなくなるまで繰り返し使い続けることができます。 傷あとテープとシリコンシート。貼っておくだけで良いか、コストパフォーマンスが良いか、使う方のライフスタイルに合わせてお選びください。 帝王切開後の心身のケア、いかに大切かお分かりいただけたでしょうか。帝王切開だからといって落ち込んでいては、肝心の子育てにも影響します。 ご家族や医師、助産師のサポートを受けながら、おなかの傷を後悔ない勲章にするためにも、しっかり傷あとをテープやシートでケアをして、お母さんを笑顔に、そして、家族皆笑顔で毎日を過ごせるようにしましょう。傷あとケアの方法について
傷口が閉じてからは新しい細胞が傷あとを埋めていきますが、傷あとに物理的な刺激が加わると赤みと傷あとが盛り上がるケロイドになることも。傷あとケアでは下記3点が重要なポイントです。 代表的なもので「傷あとテープ」がございます。物理的刺激(摩擦・皮膚の伸縮・紫外線)を防いでくれます。病院の売店、オンラインショップやドラッグストアで手に入れることが出来ます。よくある質問
帝王切開後の傷あとケアは?
・傷あとやその周りの皮膚の伸縮を防ぐ
・傷あとを紫外線に晒さない
・剥離時の刺激、乾燥や摩擦から守る
傷あとケアに便利な傷あとテープがございますので、ぜひご活用ください。傷あとケア商品にはどんなものがありますか?
サイズはいくつかございますので傷あとの大きさに合わせて選んでください。
また、シリコンシートタイプのものもございます。こちらは洗い替えができるタイプです。
ご自身のライフスタイルに合わせてお選びくださいませ。