テープかぶれとは、絆創膏、テープ固定、スポーツ用テーピング等による肌荒れの症状を指します。テープを貼付た部位にかゆみ、赤み、水疱(水ぶくれ)、痛みなどの症状が現れ、テープの種類、テープの原材料、皮膚の状態により症状と原因はさまざまです。これまでかぶれたことがなくても、テープかぶれは誰にでも起こりやすいもの。そこで対策と予防についてご紹介します。
テープかぶれの種類
テープかぶれの種類として、大きく4つに挙げられます。
接触性皮膚炎
直接皮膚にテープの原材料に含まれる何かしらの物質が触れることで、皮膚の中に浸透し刺激やアレルギー反応を受けて炎症をおこすのが接触性皮膚炎です。皮膚が弱い方はテープを貼る前にパッチテストを行うことをお勧めします。
浸軟(しんなん)
テープを長時間貼っていると、しめつけと密閉状態が続きます。汗をかいても蒸発せず、不感蒸泄(人が感じることなく、皮膚や粘膜からの水分が蒸発すること)が低下するので、皮膚が白くふやけてくる状態を浸軟(しんなん)といいます。表皮の角質層のバリア機能が弱っているので、刺激物質が皮膚の奥まで浸透しやすくなります。
緊張性水疱
緊張性水疱は皮膚の表面に力をかかることによりできる水疱(水ぶくれ)です。部位の固定にテープを強くひっぱりながら貼ると、テープが元に戻ろうとする力がかかり、その結果テープの両端に水疱ができやすくなります。
角質・表皮剥離
テープを剥がす時に、ビリっと強く剥がそうとすると角質だけではなく表皮も剥離することがあります。痛みを伴うだけではなく、表皮がなくなり真皮が露呈したままだと、雑菌が入り感染を起こすこと場合もあります。
シーン別テープかぶれの症状と原因
ケガをした時の絆創膏をはじめ、採血後の止血用のテープ、カテーテルやチューブの固定、スポーツ前のテーピング等々、皮膚にテープを貼るシーンは多岐にわたります。では具体的にテープかぶれはどんな時に起きるのでしょうか?
テーピングによるかぶれ
プロスポーツ選手や運動系の部活で足や手首にテーピングをした姿をご覧になったことがあるでしょう。
テーピングは「動くギプス」とも呼ばれ、テープで圧迫することで可動域を制限し、運動機能をサポートします。また外傷から守る役割も。さらにテーピングでケガを予防することにより、精神的に安心し、スポーツや競技に集中できるメリットもあります。
ただし、強く圧迫しすぎると、循環・神経障害の原因になるので注意が必要です。また、テーピング用のテープは、汗に強く、はがれにくい素材を原材料に使用しています。そのため原材料の物質に対し、テープかぶれ(接触性皮膚炎)を起こす場合があります。
絆創膏によるかぶれ
絆創膏は傷口を守ります。ただし、素材によってはかぶれてしまうことがあります。通気性が悪い絆創膏は蒸れやすく、雑菌が繁殖の原因につながります。それによって皮膚がかぶれてしまうと、絆創膏を剥がす時にも痛みが伴います。絆創膏を選ぶ時はできるだけ保護力があり、通気性が良いものを。貼るときは無理にきつく締めつけないようにしましょう。汗や水で濡れた時は速やかに新しい絆創膏に替えることも大切です。
透析や点滴の固定時に
入院通院中、または在宅医療の治療に、刺入部を固定するためにサージカルテープやドレッシング材を貼ります。どうしても病を患っている時は、思うように体を動かすことができず、代謝も落ち、肌も健康な状態とはいえません。また治療薬によっては乾燥や浮腫みやすい症状も。このような状態でのテープかぶれは、固定したテープを剥がす時に、皮膚もめくれてしまったり、赤く腫れてしまうことがあります。
まつ毛エクステの施術
目の周りの皮膚は非常に薄く、デリケートです。ふだんこの部位にテープを貼る機会は少ないかもしれませんが、実はアイラッシュサロン(まつ毛のエクステンション施術をするサロン)では、施術中、目を開かないようにまぶたの固定にテープサージカルテープは必需品です。目の周りはデリケートなので、テープを貼った部分がかぶれたり、テープを剥がす際に角質層にダメージを与える場合があります。
テープかぶれの予防と対策
テープかぶれはどのようにすれば予防できるのでしょうか。テープ選びから肌の保護までいくつか対策があるので、シーンに合わせて選択しましょう。
テープを選ぶ
テープは通気性があり柔軟性も備えた不織布テープは幅広く用いられ、最近では肌に優しい粘着剤を使用したサージカルテープが多く発売されています。
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【サージカルテープ/医療用テープ】テープの種類と使い方について
サージカルテープは処置や手当の際に、ガーゼや包帯、チューブ、カテーテルを患部にしっかり固定するために用いられます。最近のサージカルテープは粘着力や伸縮性の高いものが開発されており、ハサミが不要で手でカットできるなど、患者さんだけでなく、手当をする医療従事者側ともに使い勝手がよくなりました。
では、テーピング用のテープはどうでしょうか?通気性はもちろん、汗や水に強いタイプをおすすめします。
肌のバリア機能を高める
肌荒れの原因の「バリア機能の低下」。花粉症やマスクかぶれによる肌荒れも、このバリア機能の低下が原因です。バリア機能を高めるためには「セラミド」が必須です。セラミドは皮膚の角質層の細胞間にあり、保湿の役割を担います。セラミドが減少すると、角質層の構造が乱れ、水分蒸発や外部からの刺激に弱くなる=すなわちバリア機能が低下の原因に繋がります。
セラミドを含む化粧水やローション、クリームといったスキンケアやサプリメントも発売されています。
保護剤を使用する
介護・高齢者のスキンテア
高齢者の皮膚が乾燥し、弱くなっているため、肌に触れる摩擦やずれによってケガをしやすくなります。
スキンテアとは
スキンテア=Skin Tear(皮膚損傷、裂ける)は、日本創傷・オストミー・失禁管理学会において、「摩擦・ずれによって、皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷(部分層損傷)」と定義しており、皮膚が内出血やあざ、裂傷、表皮がめくれている状態を指します。
加齢による肌の乾燥、低栄養状態から、むくみや水疱、長時間ステロイド使用、抗がん剤使用、透析治療等、発生する要因が挙げられます。
スキンテアが起きた時の状況として最も多いのが「体に貼っていたテープを剥がした時」が転倒やベッドの柵にぶつかった時よりも多い結果が出ています。
※参考:日本創傷・オストミー・失禁管理学会が2014年10~11月925例について調査
虐待を疑われないためにも
スキンテアはちょっとしたぶつかりやテープを剥がすだけで、起こってしまいます。そのため介護や入院治療の現場では患者や介護者の家族から「虐待」しているのではないか、と疑われる可能性も少なくありません。スキンテアを減らすために下記のような工夫を取り組んでいます。
- ●ベッドの柵のように体がぶつかりやすいような部分にカバーをかける
- ●ローションやクリーム等の保護剤を塗布する
- ●アームカバーや靴下を利用する
- ●テープを剥がす時の刺激を抑える(ゆっくり剥がす、保護剤を塗布してからテープを貼る、剥離剤を用いる)
在宅介護でも起こり得るスキンテア。患者だけではなくそのご家族も皮膚を守る知識を養い、予防のためのケアが求められます。
まとめ
サージカルテープは、ケガをした時だけではなく、点滴、透析、さらに美容サロンでも使用されています。またスポーツテーピング用のテープも様々な種類があります。アレルギー有無もあるので、自分(もしくは患者)に合ったテープを選ぶ、もしくは保護クリームを使用してかぶれないように予防をしっかり行いましょう。
よくある質問
テープかぶれは人にうつりますか?
その人の皮膚と刺激がある物質が接触することでかぶれるので、人にうつることはありません。
なぜ肌のバリア機能を高めないといけないのですか?
外部からの刺激や異物(花粉、ダニ、菌、ウィルス、アレルギー物質)から皮膚を守るために、バリア機能は重要です。