介護時に必要な食事用エプロンとは
介護に必要なものとして挙げられるひとつ、エプロン。介助者はエプロンを着用して食事や入浴、排泄の手助けを行いますが、赤ちゃんのよだれかけや小さなお子様もエプロンを着用するのと同じように、介護が必要な方向けに食事用のエプロンがあります。食事中に衣類を汚さないために、またテーブルや床に食べ物が落下しないために大きく作られていたり、ポケットが付いているものなど様々です。
食べこぼしで衣類の洗濯や床の掃除など介助する側の負担を少しでも緩和するためにも、介護時の食事エプロンは必要です。
では、どんなタイミングでエプロンを付けてよいのか、またどんな種類があるのかご紹介します。
食事用エプロンの使い時
介護が必要になったらエプロンが必須、という訳ではありませんが、体力が落ちてくると、お箸やスプーン、フォークを自分の手でしっかり持つことがままならなくなります。自分ひとりで食事をとりたくても、握る力が弱るとどうしても食べこぼしが出てしまいます。また咀嚼する力が弱くなると口に入れたときに、ついこぼしてしまうこともあるでしょう。わざとではなく、自分の意思とは反してこぼしてしまうのは、介護する側もされる側も、気持ち的に落ち込んでしまいやすいものですし、それが原因で食欲がなくなるのは元もこうもありません。
これらの兆候はエプロンの使い時です。こぼしても衣服や寝具、床やテーブルが汚れないように食事用のエプロンを着用することをおすすめします。
- ●一人で箸やフォーク、スプーンを持つ力が弱まり、食べこぼしが増えた
- ●食事の介助が必要になった
一方、エプロンを付けることに抵抗があるかもしれません。おむつと同様にこれまで一人で食事をとることができたのに、エプロンを付けないといけない、さらには食事介助=食べさせてもらわないといけない思いは、実際に介護される側でないとわからないものです。そんな思いを緩和するためにも、食事のおいしさ、楽しさを実感してもらえるような工夫が必要かもしれません。例えば旬の食材を使ったり、ヨーグルトや茶わん蒸し、プリンのような栄養素が高く消化のよいものは好まれます。またコミュニケーションも大切です。家族団らんの中で食事を摂れる機会があるのも良いでしょう。
食事用エプロンの種類
食事用のエプロンは多くの種類がありますが、大きく分けるとすると「使い捨て」「繰り返し使用できるもの」です。使い捨ては食事毎に付けて、食事後はそのまま廃棄します。洗濯や手入れが不要で、衛生的ではありますが、毎日食事の回数分使用するので、1日3食で3枚、1か月に90枚を使うとなると、その分ゴミが出ますし、フ不足しないように買い置きの必要があります。もちろん費用もかかります。
一方、柄はなく無地がほとんどなので、少し寂しい気持ちにもなるかもしれません。ただ、透明であれば、喉元が見えるのでちゃんと飲み込んでいるのかどうか確認ができるのもメリットのひとつです。
繰り返し使用できるエプロンは、そのまま洗濯が可能なもの、ふき取りだけのものなど、種類豊富です。デザインや柄も豊富なので食事の楽しみでいうと繰り返し使用できるエプロンがおすすめです。
エプロンにポケットが付いていると、食べこぼしをしっかりとキャッチします。また丈が長いエプロンは、エプロンの裾を配膳のおぼんやトレイの下に挟んで固定することができるのでテーブル周りの汚れを防ぐことができます。
普段は繰り返し利用ができるものを使い、お出かけや旅行時には使い捨てエプロンを使用するなどして、ライフスタイルに合わせて使い分けすることもおすすめします。
食事用エプロンを選ぶ際は「介護用」をお選びください。ポケットや食べこぼしを防ぐ工夫があるものは、一般的な料理を作るときのエプロンにはありません。
なお食事用のエプロンには介護保険は適用しないので、自己負担となります。
食事用エプロンの素材
使い捨ての食事用エプロンの素材はポリエチレン、不織布など水分を通さないものが多いようです。一方、繰り返し使えるエプロンは防水加工がある布製や、ポリエステル製が多く、ふき取りだけで済むものや、洗濯も可能です。またプリント生地や好きな柄を選んだり、ストール風にアレンジできるものなど、おしゃれを楽しみながら少しでも食事を楽しめるような工夫がされています。
さらにエプロンを水で洗い流すだけのシリコン製のエプロンも人気です。首にかけるだけでポケット部分が立体になっているので、しっかり食べ物や飲み物をキャッチしますが、シリコンは重みがあるのでエプロンを付ける人に負担がないかどうか確認が必要です。
メリットとデメリット
ここで使い捨てと使い捨てではない食事用エプロンのメリットとデメリットをまとめましょう。
エプロン | メリット | デメリット |
---|---|---|
使い捨てエプロン | 洗う必要がない 食事毎に替えるので衛生的 携帯に便利 飲みこみが見える | 費用がかかる ゴミが増える デザインがシンプルで華やかさがない |
繰り返し使用可エプロン | デザインが豊富 素材や機能が豊富 コストがかからない | 洗う手間がかかる 首に合わない場合がある デザインによっては飲みこみが見えない |
エプロンを付ける介護者と食事のお世話をする介助者が納得して使用できるようにしたいものですね。
食事用エプロンの使い方
食事用エプロンを使うにあたっては、ポケットの位置を確認し、首の後ろを結びます。長いものであれば、トレーの下にエプロンの裾を敷いて使用します。
食事前後の口腔ケアを忘れずに
食事前後は口腔ケアも肝心です。高齢者は飲みこむ力が弱まっています。「誤嚥(ごえん)」を防ぐために、口腔スポンジを水にぬらして口の中をさっとふき取って、乾燥した口の中を潤しましょう。あわせて、口内、舌の汚れや細菌も取り除いてくれるので、おいしく食事を味わうことができるでしょう。
食べこぼしの汚れの範囲が大きくなると、その後始末に介助するご家族の負担は大きいもの。一方介護を受ける側にとっては、食事のエプロンを付けざるを得ない状況に自分の老いをネガティブに感じたりするかもしれません。エプロンへの抵抗感を少しでも緩和できるように、普段からコミュニケーションを取ったり、食の楽しさを実感してもらうような工夫が必要ですね。