介護おむつには多くの種類があります。男性女性はもちろん、介護を受ける人が歩行できるのか、車椅子なのか、寝たきりなのかにもよりますし、また尿量によっても種類が異なります。
種類が豊富なおむつ選びについて、介護が必要な高齢者だけではなく、介助するご家族や周りの方も知る必要があるのです。
ここでは介護おむつの概要や種類、選び方について解説します。
介護おむつとは
介護おむつとは
おむつは排尿・排便を自分で制御できない乳幼児、高齢者、障がい者、入院中排泄ができない患者が着用します。おむつの種類としては、布おむつと紙おむつがありますが、現在は使い捨ての紙おむつがほとんどです。
紙おむつは大きく「乳幼児用」と「大人用」に分けられます。そのうち大人用は、介護が必要な高齢者や障がい者が着用します。筋肉や運動能力が落ち、車いすや寝たきりの人にとっては尿意(便意)のたびに起き上がり、トイレに行くのは身体的にも負担がかかるのです。また、歩行がゆっくりになると途中で失禁してしまうこともあるため、おむつが必要となります。
身体が不自由でなくても、認知症によりトイレの場所がわからなくなり失禁することもあるので、そういった症状がある方も介護おむつは必要です。
介護おむつは毎日使う消耗品なので、費用もかかります。一定の条件次第で、医療費控除対象になる場合があるので、自治体やかかりつけ医におむつ使用証明書を発行してもらえるかどうか確認しましょう。
介護おむつのメリット
介護する上でおむつは必要ですが、着用を戸惑ったり恥じらったりする高齢者も少なくありません。
「どうしても自尊心が傷つけられる」「近所のドラッグストアでおむつを買うのが恥ずかしい」と思うかもしれませんが、介護おむつを着用することで下記のようなメリットが得られます。
- ① 失禁しても安心できるので夜間や外出時も安心感が得られる
- ② 夜中起き上がってトイレに行き来することなく安眠できる
- ③ 衣類や下着を着脱したりする手間からの解放
- ④ トイレの行き来するときの転倒リスク軽減
- ⑤ 介助する側はトイレ補助が不要になる
介護おむつの名称
介護おむつにはいくつか名称が設けられています。まだまだ「おむつ」に抵抗感がある方が多いので、メーカーや介護施設では「大人用パンツ」「使い捨て下着」「紙パンツ」「サブパッド」など、自尊心を傷つけないような呼び方をしているのです。
例えば、2020年に大王製紙株式会社が大人用オムツ「アテント」を「おとなのパンツ」として全国でCMを流したところ、それまでおむつを拒否していた家族がそのCMをきっかけにおむつを着用するようになった、と話題になったケースも存在します。
呼び方を変えることで、おむつや介護は恥ずかしいことではなく、誰もが関わりがある事象であることを認識できるようになるのは良いことですね。
介護おむつの種類
介護おむつには、外側おむつと内側おむつがあります。
外側おむつは、外側から装着するもので「パンツタイプ」「テープタイプ」の2タイプに分けられます。内側おむつは、内側で吸水できるような「パッドタイプ」になっていて、外側オムツと一緒に使用できることが特徴です。
パンツタイプ
パンツタイプはその名のとおり、下着のように着用します。 見た目は普通のパンツと変わらず、履く形状です。パンツタイプは歩行が可能で、比較的介護レベルは低いものの、失禁症状があったりトイレに間に合わなかったりする方には、パンツタイプが良いでしょう。
テープタイプ
テープタイプは、一枚の生地をテープ止めして履く形状です。テープ止めであれば要介護者が動く必要がなく、外からのおむつ交換が可能になります。
介助があってもトイレに行くことができず、横になることが多くなったり、車いすで思うように動けなかったりする方にオススメです。
パッドタイプ
おむつと一緒に使用し、排泄物を吸水するためのパッドです。パッドを付けることで、外側のオムツ交換の回数が減るメリットがあります。
介護おむつの選び方
介護者の身体の状態を知る
種類が豊富な介護おむつですが、どのタイプを選べばよいのでしょうか。そのためには、介護者の身体の状態を把握することが重要です。
外出はできるけどトイレが我慢できず失禁してしまうなら薄型のパンツ、介助が必要であればパンツタイプとパッドタイプを兼用、寝ていることが多ければテープタイプとパッドタイプを兼用するなど状態に合わせて選びましょう。
外出
一人で歩行
歩行するには介助が必要
立ち上がるには介助が必要
寝ている
車椅子
身体の状況 | 外出できる | 一人で歩行ができる | 歩行するには介助が必要 | 立ち上がるには介助が必要 | 寝ている 車いすが必要 |
---|---|---|---|---|---|
排泄 | トイレ | トイレ/おむつ | おむつが多い | おむつが多い | ほとんどおむつ |
おむつの種類 | パンツ(薄型) 吸水パッド |
パンツタイプ 尿取りパッド |
パンツタイプ 尿取りパッド |
パンツタイプ 尿取りパッド |
テープタイプ 尿取りパッド |
身体のサイズ
パンツタイプはウェストのサイズに合うものを選びましょう。サイズが大きすぎると、漏れやすくなります。
また、ウェスト周りのおなかが出ているものの、足が細くなっているような体型では、隙間から排泄物が漏れる場合があります。そうした場合は、パッドを併用することをおすすめします。
テープタイプはお尻のサイズに合ったものを選ぶとよいです。
パンツタイプと違って、テープで締めたり緩めたりする多少の調節が可能ですが、寝ていることが多い介護者ですと横から漏れる場合があるので、サイズはぴったり合うものを選んでください。
吸収量
吸収量も選ぶ際のポイントになります。成人1日の尿の生成量は約1200~1500ml、1回の尿量は約150~200mlなので、1日5~6回程度、排尿するといわれています。(個人差はあります)
例えば、くしゃみやおなかに力が入ると少量の尿が出てしまう尿漏れであれば、吸水パッドや吸水ショーツで事足りるかもしれませんが、トイレに行くまで我慢できず失禁してしまう場合やご自身で歩行してトイレに行くことができる場合は2回分、介助が必要な場合は4回分の吸収を目安とすると良いでしょう。
夜用タイプもあるので、場合に応じて使い分けることができます。
介護おむつの着用・交換
介護おむつを交換するときは、介助者は必要な物品を用意しましょう。
- ・グローブ
- ・トイレットペーパー
- ・おしり洗浄ボトル
- ・清拭用タオル
- ・石鹸や消毒剤
- ・ペーパータオル
- ・ビニール袋や新聞紙(着用後のおむつを床に直接置かないため)
パンツタイプであれば、自身で履き替えたり、介助者に手伝ったりしてもらいながら着用・交換します。
着用するときは、足を入れてから太ももまで上げ必要に応じてパッドを挟みます。パットを足に入れたら、手すりがあるところで立ってもらって腰までパンツを上げましょう。 立ったままだと転倒するリスクがあるので注意する必要があります。
アクティ® パンツタイプのはき方のポイント「介助者がはかせる場合」篇
テープタイプは、基本的には寝ている状態で着用・交換します。 仰向けに膝を立ててもらった後、陰部には排泄物が付着しているので、きれいにふき取りましょう。汚れた部分と肌が触れないように使用済みのおむつを丸めて内側に折り込みます。
横向きになってもらい、お尻をきれいにふき取れたら、使用済みおむつの横に新しいおむつを用意して、使用済みおむつを引き抜きます。引き抜いたら新しいおむつをあてて、テープでしっかり固定しましょう。
紙おむつ テープ止めタイプ(尿とりパッド併用)【排泄用品(失禁・おむつ関連)】の使い方
近年介護が必要になると、陰部やお尻の洗浄を介助してもらわなければならず、介護脱毛を検討する人も増えています。
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おむつかぶれの原因と予防
おむつをすると、乳幼児と同じくおしりや陰部がかぶれやすくなります。排泄量が多く頻繁に交換する機会がなくなり、蒸れて肌荒れやかぶれが生じるのです。
加齢による皮膚トラブル
高齢者は赤ちゃんと比べると皮膚の角質層が乱れ、うるおいが保つことができず皮膚が乾燥しやすくなっています。また、バリア機能が低下し、汗や排泄物のような外的ダメージに弱くなっているので注意しましょう。
着用時間と摩擦
赤ちゃんはぐずったり泣いたりして、おむつ替えのタイミングがわかりますが、高齢者は声に出し辛かったり気が付かなかったりすることもあるので、よく観察するようにしましょう。
長時間着用していると下半身が高温多湿となり、雑菌の繁殖には好環境な状態となります。
おむつを交換するときは、陰部やおしりをしっかり洗浄して洗い残しがないようにしなければなりません。また、寝たきりや車いすに乗る機会が長いと、肌とおむつに体の圧がかかり、摩擦が生じ床ずれの原因にもなります。
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床ずれは褥瘡(じょくそう)とも呼ばれています。寝たきりや体勢が変わらないままの状態が長時間続くと、体重がかかる部位の皮膚は圧迫されるため、血流が悪化します。 靴ずれや股ずれの経験があれば想像しやすいですね。靴ずれは、足首や甲の外反母趾と靴の間に生じる摩擦で赤く腫れたり、皮むけや水ぶくれが起こったりして痛みを生じます。靴ずれの場合、絆創膏を貼って応急処置をすれば基本的に大丈夫です。
おむつかぶれは放っておくと、どんどんひどくなります。陰部やおしりを洗うときも汚れ残りがないか確認し、日ごろからおむつを交換するときはよく皮膚の状態をみるようにしましょう。
日本の総人口に占める65歳以上の割合=高齢化率は28.9%で、超高齢化社会です。※
後期高齢者はますます増え続け、要介護(要支援)者も増加するとみられています。 三大介護のひとつである排泄介助。まずは、どの種類の介護おむつを選べばよいか理解することが大切です。 少しでも自尊心を保ち、排泄の自立支援に繋げられるためにも、その人のお体の状況にあった介護おむつを選ぶようにしましょう。
よくある質問
介護おむつ(大人用おむつ)の種類は?
外側おむつ:大きくパンツタイプとテープタイプの2種類あります。 パンツタイプは比較的介助無しでも生活できる方、またテープタイプは横になる頻度が高い方に適しています。
内側おむつ:外側のおむつの中に吸水パッドとして装着するおむつです。排泄物の吸収量が高いので、交換の手間が省け、日中や夜用など使い分けて使用します。
介護おむつ(大人用おむつ)が漏れないようにする方法は?
- パンツタイプ:ウェストサイズに合わせてぴったりの物を選ぶ。ウェストサイズは合っていても、足が細く隙間があると漏れる恐れがあるのでその場合は、吸収パッドを併用する。
- テープタイプ:お尻のサイズに合わせてぴったりのものを選ぶ。
- パッドタイプ:自力で歩行できるが失禁の恐れのある方は吸収量2回分を。介助が必要な方は4回分を目安に着用するのが良いでしょう。