集音器(助聴器)とは~補聴器との違いやメリットについて

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追記更新

耳が聞こえにくくなったら補聴器?

加齢に伴い、耳が聞こえにくくなることを「加齢性難聴」といいます。加齢性難聴も高音から聞こえにくくなるようです。蚊の羽音のような高音(モスキート音)が20代以降、聞こえなくなる現象を想像するとわかりやすいかもしれません。聞こえが衰えても、何度か聞き直したり、テレビの音を大きくするなどすれば、日常生活にそれほど支障がないかもしれません。ただそのままにしておくと、脳が音に対して鈍くなりどんどん言葉を聞き取る能力が衰えてきます。

こんな症状はありませんか?該当するものがあれば加齢性難聴の可能性が高いので、耳鼻科に受診して聴力検査を受けるようにしましょう。

チェックリスト

高音域の聞き取り

聞こえにくいか行とさ行

特に「か行」「さ行」「は行」の聞き取りにくくなります。「加藤(かとう)と佐藤(さとう)」「握手(あくしゅ)と拍手(はくしゅ)」「白い(しろい)と広い(ひろい)」・・・こんな聞き間違いに覚えがあったら、高音が聞こえづらくなっている表れです。これら「か行」「さ行」「は行」は子音の中でも高音域(2~4キロヘルツ)に分類され、加齢による聴力の低下は下記のグラフのとおり、60歳を境に高音が聞こえにくくなってきます。

年齢別聴力

※参照:立木孝、日本人聴力の加齢変化の研究、Audiology Japan. 2002;45(3):241-250.より改変

年を取ると、身体のあらゆる機能が低下します。視力が悪くなると老眼鏡、歯が抜けてしまうと入れ歯、そして耳が遠くなったら補聴器といった具合に、年齢を重ねると、何かしらのサポートが必要となってきます。耳の聞こえサポートとして、補聴器だけではなく集音器(助聴器)もあるのをご存じでしょうか?ここでは、補聴器と集音器(助聴器)の違いについて、詳しくご紹介します。

補聴器とは

補聴器

補聴器とはその字のとおり「聴こえを補う」機器です。耳に入る音を大きくして聞こえるようになります。管理医療機器(クラスⅡ)にあたり、販売もしくは貸与にあたっては管理医療機器取り扱い許可の届出が必要で、補聴器が必要かどうかの判断は専門医に聴覚検査の上、診断してもらいます。補聴器は難聴の度合いや使うシーンによって種類はさまざまです。そのため聴覚検査を行い、医師と相談した上でどの補聴器にするか選ぶ必要があります。さらに聞こえの度合いはそれぞれですので、その人にあったフィッティングの調整も必要です。こうした背景から言語聴覚士や補聴器技能者といった資格の必要性が理解できます。

補聴器には「耳かけタイプ」「耳あなタイプ」「ポケットタイプ」があります。眼鏡をかけていると耳かけタイプは使いにくいかもしれません。難聴の度合いも含めて、どのタイプが自分に合っているか専門医や販売店で相談が必要です。

補聴器をかける男性

なお、2022年国内の補聴器所有率 (普及率)は全体の15.2%ですが、イギリス53%、フランス46%、韓国37%・・・と海外に比べると普及率が非常に低いのが現状です。

 

※参照:一般社団法人 日本補聴器工業会JapanTrak2022資料より

耳が遠い女性

なぜ、補聴器を敬遠する人が多いのでしょうか。JapanTrak2022によると、難聴の傾向があっても補聴器を使わない理由として「わずらわしい」「難聴の程度が低い」「聴力が正常に回復しない」「経済的理由」が多いようです。ただ、実際装着してみると、「補聴器を付けて良かった」「QOLが改善した」「家族や周りも助かっている」という声があり、普及するハードルが高いのが現状のようです。

集音器(助聴器)とは

聞こえをサポートする機器には補聴器の他に集音器(助聴器)があります。漢字のとおり「音を集める」「聞こえを助ける」機器で、音を大きくして耳に届けます。集音器は大小関わらず全ての音を大きくするので、大きい音はさらに大きく聞こえてしまいます。

医療機器ではなく補聴器よりも手軽にインターネットでも購入できるのも特徴です。形状は電話の受話器のようなタイプ、イヤホン型、ポケット型、テレビの前に置くスピーカー型など様々です。

プリモ 助聴器(集音器) 聴六 HA-6
プリモ 助聴器(集音器) 聴六 HA-6
プリモ 助聴器(集音器) 聴七郎
プリモ 助聴器(集音器) 聴七郎

特に、新型コロナウィルス感染症の影響で、マスクをしなければならず、さらに感染防止にパーテーションやクリアシート越しでの会話は、難聴ではない人でも会話を聞き取りにくいことがしばしばありました。その状況下で、耳が聞こえにくくなった高齢者にとっては、病院や銀行、役所などでの会話は聞き取ることが難しかったと想像できます。

パーティション越しの医療従事者

そこで必要に応じて集音器を使う人が多く、特に電話の受話器のような集音器は、出かける際に携帯して、非マスクやパーテーション越しでの会話の際に有効です。

集音器は医療機器ではなく、病院での検査も不要です。そのため気軽に購入できること、また家族で親御さんとの会話がで聞き取りにくそうだなと感じたら、集音器のプレゼントもおすすめです。

補聴器と集音器(助聴器)の違いについて

補聴器と集音器の大きな違いは、医療機器であるかどうか、厚生労働省から医療機器として承認されたものが補聴器です。その他の違いは下記に述べます。

耳が遠い女性

どこで買えるのか

補聴器は専門店で購入できます。専門店、メガネ屋、百貨店や電気店、また通販でも購入が可能です。ただし、難聴の度合は個人差があるので、フィッティングが必要なのでできるだけ対面で購入した方が良いでしょう。また、いつでもフィッティングができるように遠方よりも近場のお店を選ばれることをおすすめします。いずれにせよまずは耳鼻科で専門医により補聴器の必要性を判断するので、初めての場合は医師に相談するのが安心ですね。 また、通販といっても専門のスタッフが訪問してフィッティングの相談を受けるサービスもあるので、気になったら、相談を仰ぐのも良いかもしれません。

一方、集音器(助聴器)は、専門店をはじめ、メガネ屋、百貨店、家電量販店や通信販売で購入が可能です。種類や価格は幅広いのですが、インターネットを含む通信販売の場合は返品交換ができない場合もあるので、事前によく調べてから購入するようにしましょう。

保険適用について

補聴器、集音器ともに保険は適用外です。介護保険の適用も受けることはできません。補聴器については、保険適用外ですが、助成金制度があります。

     
  • ●障害者総合支援法:身体障害者手帳を発行後に申請します
  •  
  • ●医療費控除:補聴器は医療費控除対象です。一定額以上の医療費を支払うと、税金の一部が返金されます。
  •  
  • ●自治体毎の支援:高齢者のQOL向上を目的に実施している自治体があります。

価格について

補聴器はおよそ10万円以上はかかりますが、集音器は1万円以下のものもあります。価格の差が大きいのは医療機器であるかないかも大きいことや補聴器と集音器は仕組みが異なることからも価格差があるのは理解できます。一方、補聴器は非課税です。現在の消費税は10%ですから(2023年現在)、10%が非課税になるのは、補聴器を検討されている方にとっては大きなメリットでしょう。

ただし、電池等の消耗品やオプション品は課税対象です。 集音器は課税対象品です。消費税がかかっても集音器の方が安く、種類が豊富です。いくつか試しに使ってみる最初の入り口としては良いかもしれませんが、集音器はフィッティング=調整がない分、個人に合わせたものではなく、納得いく効果を得られるかどうかの判断が難しいのが難点かもしれません。

おためしサービスの利用も

補聴器と集音器、仕組みや価格に大きな違いがあります。補聴器を利用すると、「安心感」「会話のしやすさ」を感じる方が多いようで満足度が高い傾向です。ただ、価格が高いこと、補聴器を利用することに抵抗を感じる方がいらっしゃるかもしれません。

介護スタッフと会話をする女性

補聴器を検討するにも、耳鼻科で検査や相談し、そこから専門店で購入、フィッティング・・・となると、どうしても購入に至るまでのハードルが高いのが現状のようです。一方、集音器は耳鼻科や専門店に行かなくても、店頭やインターネットで気軽に購入できること、またイヤホンタイプもあれば受話器タイプ、テレビの近くに置いて音を大きくするタイプがあり、聞こえにくい状況に応じて、使い分けが可能です。音響専門のメーカーや大手家電メーカーからも販売されているのでその点も安心できるかもしれません。一部のメーカーではおためしサービスも実施していますので、一度集音器をおためしで利用するのも良いでしょう。

会話が聞こえにくいだけではなく、後方から近づく車の音に気が付かないとあやうく事故に巻き込まれるかもしれません。またテレビの音量を大きくしないと聞こえないと、周りに迷惑がかかってしまうのではないか、と気後れしてしまうと、消極的となり、老いが進んでしまうかもしれません。耳が聞こえにくくなったのは老いのせいだからあきらめるのではなく、周りからのサポートが必要を受けながら、補聴器や集音器で生活の質を少しでも改善するようにしましょう。

よくある質問

補聴器と集音器どちらが良いですか?

補聴器は聴力に応じて音を補って聞こえやすくする、集音器は音を集めて全ての音を大きくするので、聴力や生活環境に応じて選ばれることをおすすめします。聞こえが悪くなったと思ったら、まずは耳鼻科で聴力検査をして医師と相談しましょう。

集音器はいつ使えばいいのですか?

銀行や役所の窓口、病院の診察、ご自宅での家族との会話など、必要なときのみ使用できます。特に感染防止でマスクやパーテーション越しでの会話が増えているので外出時にも。

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