包帯とは
包帯は、ケガや出血をしたときに創傷部にガーゼをあてた上から圧迫して血を止める「止血」、傷口をガーゼで覆う「保護」、また骨折や捻挫の「固定」、創傷部に塗った薬や絆創膏などがずれなくする「支持」といったように、色々な用途で使われます。
そのため包帯は、病院だけではなくご家庭の救急箱にも包帯が常備されていると思います。一昔前は白い筒状に巻かれた包帯がなじみ深いようですが、今は多くのメーカーから用途に合わせたさまざまな種類の包帯が販売されています。
例えば、三角巾、腹帯、ギプス、眼帯、さらには骨折や脱臼時に固定するために用いる添え木=副木(ふくぼく)も包帯に分類されます。
包帯はいつ頃から使われていたかご存知ですか?エジプト最古のミイラは包帯に巻かれた状態で発見されており、時代は紀元前4500~3800年頃までさかのぼります。
当時、包帯をミイラに巻いていたのは、遺体の保護のためだったのか、死者を弔う葬祭のためだったのか目的は定かではありませんが、紀元前から包帯が用いられていたのは改めて驚かされますね。
一方、日本最古の医学書「医心方(いしんぽう)」(984年)にも包帯の記述があり、救急絆創膏が1920年代に発売されるまで包帯が医療の現場で古くから使われていることがうかがえます。
ミイラといえば、ハロウィンの仮装やお化け屋敷などで体や顔を包帯でグルグル巻いたミイラを見かけたことありませんか?
1932年アメリカで「ミイラ再生」というホラー映画が公開され、これをきっかけにミイラ=ホラーと浸透したようです。
包帯は絆創膏と比べると一般のご家庭で頻繁に使うことは少なく、医療の現場でも創傷被膜材の発達に伴い、使用頻度は減ってきています。
ただしいざ包帯が必要となった時、「どんな包帯を用意したらよいのか」「包帯はどうやって巻けばよいのか」「どうやって包帯を止めるのか」と、迷わないための包帯選びについてご紹介します。
包帯はどんな時に使うのでしょうか
包帯は下記のような際に用いられます。
止血・圧迫 | 出血部位を圧迫して止血するため |
---|---|
保護 | 創傷部を外的から保護 |
固定 | 骨折や脱臼時の骨と間接の固定 |
保持・支持 | 創傷部に貼った薬剤や絆創膏、パッド類のズレを防ぐ |
矯正 | 骨折部の整復 |
また、医療の学校や専門機関で学ぶ看護学に「包帯法」があります。医療の現場では、看護士さんが包帯で処置することが多いですよね。また、ボーイスカウトのような野外活動でも救急法を学ぶ際に包帯の巻き方を習うことがあります。
包帯法でいう包帯や三角巾、腹帯は創傷治療や救急時の処置に用いられ、用途・処置内容によって多種多様な包帯を使い分けています。
包帯の種類とその特徴
最近では薬局やドラッグストアでも数種類の包帯が店頭に並んでいますが、どれも同じようでありながらも、素材や形状、サイズがさまざまです。以下の表を参考にして、処置の内容にあった包帯を選ぶようにしましょう。
代表的な包帯の例です。
包帯の種類 | 用途・特徴 | 素材 |
---|---|---|
非伸縮性包帯 (巻軸包帯) |
多目的幅広く使用。ただし伸縮しないので、動きに弱く緩みやすい。素材が綿なので皮膚にやさしい | 綿 |
自着包帯 | 包帯どうしがピタッとくっつくので巻き止めが不要。皮膚や毛には付着しにくい | ポリエステル、ポリプロピレン、ラテックス、合成ゴム(粘着部) |
粘着包帯 | 粘着剤がついているテープ。剥離紙を剥がして用いる | 綿、不織布、ポリアクリル(粘着部) |
自着包帯 | 包帯どうしがピタッとくっつくので巻き止めが不要。皮膚や毛には付着しにくい | ポリエステル、ポリプロピレン、ラテックス、合成ゴム(粘着部) |
伸縮包帯 | 創傷部の保護。通気性に優れ体動を妨げないので、肘や膝の屈曲部にフィットする | 綿、ポリウレタン |
弾性包帯 | 圧迫力があり関節など固定しにくい部位に。骨折、脱臼、捻挫の固定や浮腫、下肢静脈瘤にも | レーヨン、ポリウレタン、ポリエステル |
弾力包帯 | 弾性包帯と同じく圧迫力があり患部の固定に使用。弾性包帯との大きな違いは素材 | 綿 |
ネット包帯 | 筒状の包帯。部位(頭、手指、膝、肘など)にかぶせて使用 | 綿、ゴム |
チューブ包帯 | チューブ状に編まれた包帯で強い固定力が必要とされる時、患部を効果的に圧迫が可能 | 綿、ラテックスゴム |
三角巾 | 正方形の木綿布。使い方を覚えておくといざという時に役立ちます | 綿 |
滅菌救急包帯 | 滅菌済みでパッドがついているものもあり。救急時に用います。 | 綿 |
上記の表は代表的ですが、製品によっては「自着性弾力包帯」」「伸縮性弾力包帯」といった特徴が組み合わさったものもあります。
その他に、ほつれにくくするための耳付き包帯、巻きあがりの状態がわかるライン付包帯といったものも。色は白だけではなくベージュ、生成りがほとんどですが、ペット用にはカラフルな柄入りもあります。
参考:伸縮性の目安
伸縮性が強いほど関節の圧迫力がありしっかり固定できます。
参考:ネット包帯のサイズ
ネット包帯は部位にあったサイズ(幅)を選ぶと身体のどこでも簡単に包帯を巻く(かぶせる)ことが可能です。
号数 | 幅 | 用途 |
---|---|---|
1号 | 0.8cm | 指、趾(足の指) |
2号 | 2.0 cm | 手、足 |
3号 | 2.5 cm | 上肢、下肢 |
4号 | 3.5 cm | 肩、大腿、頭 |
5号 | 5.0 cm | 頭、体幹 |
6号 | 7.0 cm | 体幹 |
7号 | 8.0 cm | 体幹 |
※ただしメーカーによっては幅や号数が異なるので購入の際は、事前に確認が必要です
包帯の巻き方
一般的にネット包帯やチューブ包帯を除くと、一枚の布が筒状に巻かれた状態となっているので、必要な長さにカットして使用します。
いざという時に、「どのくらいまで巻けばいいのか」「どのように止めればいいのか」悩まないように、簡単な包帯の巻き方と必要事項は覚えておくとよいでしょう。
また最近では、YouTube等で動画が公開されているので、実際の動きを見ながら習得することもおすすめです。
包帯を巻く前に、事前に確認にしましょう。
① 包帯は清潔できれいなものを使いましょう(穴やほころびがあると緩んでしまいます)
② ハサミ(最近は手でちぎれる包帯もあります)
③ テープ(自着・粘着ではない包帯の場合は止めが必要です)
環行帯(かんこうたい):包帯が緩まないよう、ぐるぐると同じところを環状に巻きます。基本の巻き方の一つです。
① 包帯の端を押さえて、ぐるぐる斜めに巻きはじめ巻き始める | |
② 斜めに巻いているので三角に飛び出ている端を折り返して、その上からまたぐるぐるとらせん状に巻く | |
③ 巻き終わったら、テープで止める |
螺旋帯(らせんたい):包帯を少しずつ重ねて、らせん状に巻く方法です。保護や固定のための巻き方です
① 巻き始めは環行帯と同じです | |
② 包帯を1/3~1/2ほどずらし重ね、らせん状に巻きます | |
③ 最後は環行帯と同じ巻き終わりです |
麦穂帯(ばくすいたい):関節(手、足、股)などよく曲げる部位への巻き方です。
① 巻き始めは環行帯と同じ、包帯を斜め上に(3)巻きます | |
② 包帯を後ろに(4)通したら、斜め下に向けて8の字のように巻いていきます | |
③ 最後は環行帯と同じ巻き終わりです |
折転帯(せってんたい:)腕や下腿のような部位にという巻き方。「折」と「転」の漢字の通り、折り返しながら包帯を巻くのでほどけにくくなります。
① 巻き始めは環行帯と同じ、包帯を斜め上にして手で押さえます | |
② 押さえたところを折り返して重ねて巻きます | |
③ 最後は環行帯と同じ巻き終わりです |
蛇行帯(だこうたい):骨折の際、ギプスシャーレや副え木を固定するための巻き方
① 巻き始めは環行帯と同じ | |
② 包帯は重ねないで巻きます | |
③ 最後は環行帯と同じ巻き終わりです。副え木などしっかりと固定します。 |
おそらく一般のご家庭では環行帯、螺旋帯、蛇行帯で巻くケースがあると思います。そのほかの巻き方は、やはり看護師の方がしっかり巻くことができます。ケガをしている時は、安静が第一。うまく巻けずに時間がかかりすぎると身体の負担になるので注意しましょう。
最後に包帯はどのように止めればよいでしょうか?昔は金具で留めることもありました。
ただ、金具は紛失しやすい、外れた時に皮膚と接触すると怪我やすい、などを理由に徐々になくなってきました。
同時に、先に紹介した包帯同士でくっつく自着包帯や粘着剤がついている粘着包帯、また水や熱に強く、粘着力ある不織布テープが発売され、包帯を止めるのは金具からテープや包帯そのものに変化してきました。
現在では包帯は、ドラッグストアで簡単に入手できるものから、アトピーの患者さん向けのネット包帯も販売されています。まずはご自宅の救急箱にどのタイプの包帯が保管されているか確認してみませんか。
よくある質問
包帯はどんな時に使う?
出血部位を圧迫・止血。傷口の保護。創傷部に貼った絆創膏などのずれを防ぐための支持。骨折部の整復や脱臼時の骨と関節の固定。
包帯の種類は?
包帯同士がくっつく自着包帯。屈曲部にフィットする通気性に優れた伸縮包帯。圧迫力のある弾性包帯など様々。処置内容により最適な包帯を使用しましょう。