スマートフォン(スマホ)やパソコンを長時間使用していると、首や肩のこりを感じたことはありませんか?それだけではなく、眼のかすみや頭痛を感じることも。 その症状は「ストレートネック(スマホ首)」かもしれません。ここではストレートネックの症状や原因、予防法についてご紹介します。
ストレートネック(スマホ首)とは
ストレートネックの症状
スマホやパソコンを長時間使用すると、首が前に出てしまい、まっすぐ(=ストレート)の状態になります。本来、首の頸椎は緩いカーブ(アーチ型)ですが、まっすぐの状態は首への負担が大きくなり、首、肩のこり、眼精疲労、ドライアイ、頭痛、腰痛、吐き気、手のしびれなど、多くの不調をきたします。
下を向いていると首も曲がっているように思えますが、実はイラストのようにまっすぐな状態になっているのです。
今、顔をまっすぐにした状態で首の後ろの骨を触ってみると、緩く曲がっている(アーチ型)ことがわかります。一方、片手にスマホを持ち画面を見た状態で、同じように首の後ろ骨を触ってみると、まっすぐになっていませんか?
また下を向くことが多くなると、首のシワや頬のたるみといった美容の面でも影響が出るかもしれません。
「肩こりはいつものことだから」を放っておくと、首や肩だけではなく、体全体に支障をきたす可能性が高くなるので、対策は必要不可欠でしょう。
ストレートネックの原因
2007年にAppleがiPhoneをアメリカで発売し、その翌年日本でも発売されてから、スマートフォン(スマホ)の普及が急速に伸びました。
スマホはニュースサイト、地図、SNSやゲーム、QR決済など利用頻度がこれまでの携帯電話(ガラケー、フューチャーフォン)よりも高く、日常生活においてなくてはならない存在です。そのため、スマホを利用する時間が増えると、首が前に出てしまいストレートネックの状態になってしまうのです。
またリモートワークにより、ノートパソコンで仕事をする人が増えましたが、会社とリモートワークの環境、特に机と椅子の高さが異なると首や肩に影響が出てしまいます。スマホやPCを使わない人でも普段から猫背や反り腰のような、正しい姿勢を保つことができない人もストレートネックの原因になるともいわれています。
では、なぜストレートネックは首に負担がかかるのでしょうか?
頭を支える首の役割
人間の頭の重さはスイカ1玉ほどの重さ、すなわち4~6Kgと言われています。スーパーや店頭でスイカ1玉持ったことがあれば想像できると思いますが、首でスイカを支えているとなると普段から首には相当な力がかかっていることがわかるでしょう。
首は、普段から首の骨である頸椎がアーチ状に前弯していることで、頭の重さを分散する役割を担っています。しかし、ストレートネックになると頭の重心が前へ移動したままとなり、頭を支えるには首の頸椎まわりの筋肉や背骨に負荷がかかってしまうのです。
アメリカのケネス・ハンスラージの研究によると、スマホを見る角度によっては、最大27Kgの力がかかっているそうです。※
頭頚部の角度 | 首(頸椎)にかかる重さ |
---|---|
正しい姿勢 | 5Kg前後 |
前方に15度傾く | 約12Kg |
前方に30度傾く | 約18Kg |
前方に45度傾く | 約22Kg |
前方に60度傾く | 約27Kg |
電車の中で、首を60度位まで曲げてスマホを夢中で操作している人を見かけますが、約27Kg相当=正常な姿勢の約5倍以上もの負荷がかかっていることになります。
さらに、スマホ画面の液晶からブルーライトにより目が疲れやすくなる上、首にも負荷がかかっています。少しでもストレートネックにならないように、意識することを心がけましょう。
日常生活に支障が出たら?
もし日常生活を送る上で、肩こりがひどくなり頭痛、吐き気といった症状が長く続くようであれば、まずは整形外科を受診し、レントゲンを撮るなどストレートネックの症状を確認してください。
整形外科にはリハビリテーション科を兼ねているところもあります。また診療内容、通院時間に自由度があるのは整体や接骨院です。保険適用については各院に確認してください。
セルフチェック
自分がストレートネックかどうか、簡単なセルフチェックがあります。
壁にかかと、お尻、肩甲骨、肩をくっつけて直立します。この時ご自身の頭が壁に当たりましたか?もし当たればストレートネックではなく正常です。もし顎や首を上げてようやく後頭部が壁に触れるようなら、ストレートネックの可能性が高いかもしれません。
ストレートネックの予防
正しい姿勢
まず姿勢を意識すること。スマホを使うときの姿勢を改めましょう。できるだけ目の高さにまで上げてください。最初は慣れないかもしれませんが、片手でスマホを持ったらもう片方でスマホを持っている方の肘を支えてみるなど、1日数回意識して持ち方を変えながら、少しずつ改善していきましょう。
パソコンを操作する際は、モニターの位置が低いと目線が下になり、ストレートネックになりやすくなります。ノートパソコンの場合は専用のスタンドや外付けモニターを利用して、無理のない姿勢を維持する環境を作りましょう。
なお、横になってスマホを見るときも注意が必要です。仰向けは腕を上げているので肩がこりやすくなったり、横向きやうつむきは首の負担がかかったります。しかもスマホの液晶と目の距離が近すぎることで、ブルーライトで眼精疲労やドライアイの原因になりかねないため、寝ながらスマホは控えるようにしましょう。
スマートフォンやPCの操作時間
スマートフォン、パソコン、タブレットなど、操作時間を見直しましょう。例えば、電車の中ではスマホを休ませる。パソコンであれば1時間に1回程度休憩を入れる。などを意識すると良いです。もちろんその休憩時間にスマホは持たないように。それだけでも首への負担が緩和されるので習慣づけましょう。
ストレッチ
ストレッチも有効です。よくストレートネックで挙げられるのがタオルストレッチです。
- ① フェイスタオルを首にかけます
- ② 両手でタオルを持ちます
- ③ そのまま頭を後ろに上げ、タオルを持った手を前に出します
- ④ この状態で5秒間静止、5セット繰り返します
ストレッチは毎日継続して続けるようにしましょう。もちろん、スマホやパソコンのすき間時間に首を左右に動かしたり、肩を回したりすることを意識づけも心がけましょう。
入浴方法
ストレートネックは頸椎周りの筋肉を使っています。入浴時には首までしっかりつかり首や肩の筋肉をあたためてリラックスさせてください。最近では、お風呂で使うバスピロー(枕)もあります。首から肩をしっかり枕でやさしく支えてくれるので、全身リラックスするにはおすすめです。
枕を替える
体にあった枕を使っていますか?いくら眠れていたとしても、枕が原因で首への負荷がかかったままの可能性もあります。枕が高すぎると首が反ってしまい、低すぎると首が下がり頸椎に負担がかかります。最近では、スマホ首やストレートネック専用の枕が多く販売されています。できるだけ実際に試し、首へのホールド感を確認して選んでください。
ほんの10年前に耳にしたことがなかったストレートネック(スマホ首)。特にスマートフォンは小学生からシニアまで、日常生活では当たり前のツールとなった今、誰もがストレートネックになる可能性が高くなりました。正しい姿勢を意識し、そしてストレッチをして予防に努めましょう。
よくある質問
ストレートネックになりやすい年齢は?
基本的には年齢は関係なく、誰でもストレートネック状態になってしまう恐れがあります。
ストレートネックは、別名「スマホ首」とも言われていて、スマートフォン(スマホ)やパソコンを長時間、同じ体制で使用していると首が前に出てしまいます。
ストレートネックの初期症状は、どのような状態ですか?
スマートフォン(スマホ)やパソコンを長時間使用していると、首や肩のこりを感じたことはあるかとは思いますが眼のかすみや頭痛も感じる場合は、ストレートネックを発症している可能性が考えられます。
自分がストレートネックかどうか、簡単なセルフチェック方法をコラム内でもご紹介しておりますので
併せて、ご確認くださいませ。
(ストレートネックのセルフチェックについて、より詳しく知りたい方はこちら)
ストレートネックは治るのでしょうか?
ストレートネックは本来、弯曲になっている頚椎がまっすぐになった状態(=変形)です。そのためすぐに完治することはありません。じっくりリハビリをして周りの凝り固まった筋肉をほぐしながら頸椎を正常な形に近づけるようにしましょう。(※個人差があります)
ストレートネックは何科にかかればいいですか?
整形外科を受診すると、レントゲンを撮り診断します。一方、頭痛や吐き気、手のしびれといった症状がみられる場合は、脳神経外科でMRIを撮る場合もあります。