ギプスを巻いた足

【ギプスについて】固定中の過ごし方と種類をご紹介

目次

ギプスとは?

「ギプス」。その言葉を聞くと「骨折」を連想しますよね。ギプスはドイツ語でGips、石膏を意味します。ちなみによくギブスと呼ばれますが、正確にはギブスではなくギプスです。

昔のギプスは石膏で固めて固定することが主流でしたが、最近はプラスチックやグラスファイバーでできたギプスがほとんどです。

骨折や脱臼、じん帯のケガには、ギプスを用いて患部を固定し、治療します。ギプス包帯法は、ケガをした患部を固定して安静にするための包帯法のひとつです。

整形外科でレントゲンを撮影したら、患部の症状を見ながらギプスが必要かどうかを診察します。一方で、義肢及び装具の装着にもギプスを用います。

義肢装具士は、医師の処方の元患者の身体をギプスで型をとり、その型から義肢装具を制作します。

義足

ギプスの種類と使用方法

骨折の治療法であるギプスはいつから用いられているのでしょうか?包帯のように歴史が古いものではなく、19世紀、イギリスとオランダの戦争でケガをした兵士を搬送する際に、包帯に石膏を含ませて固定したことがきっかけとされています。

日本では1955年、東京衛材研究所(現在はアルケア株式会社)が初めて国産の石膏ギプスを製造販売し、各医療現場で骨折の治療にギプスが普及されてきました。

昔は、ギプスといえば石膏が付いた包帯をぐるぐると患部に巻き、固めていくのですが、完全に乾燥させるには48時間かかっていました。

今では乾燥する待ち時間による身体の負担を緩和するために、改良を重ねプラスチックを原料とした素材が開発されています。

水に浸すと固まる水硬性樹脂とガラス繊維の基布で、固定力があり30分程度で固まるギプス包帯が主流です。

ギプスの巻き方

通常、ギプスは看護師や医療従事者が行います。一般のご家庭でギプスを巻くことはほぼありません。また医療機器にあたるので、添付文書が付属されています。製品毎に付属している添付文書をよくお読みください。

1. 患部に直接ギプス包帯は巻かず、下巻用の包帯を巻いて保護します
2. ギプス包帯を水に浸し、軽く絞る
3. 包帯のロールを転がすように患部を巻きます
4. ギプスから露出している肌の部分を傷めないように保護する。
5. ギプスが固まる際に、水との化学反応により気化熱が発生するので、放熱に注意する

ギプスを巻かれた腕

なお治療が終わると、当然ながらギプスを切断します。その際、専用のギプスカッター(キャストカッター、キャストソー)を用います。

一度でもカッターで切断されたことがある方なら想像できると思いますが、目の前でカッターの刃が高速回転しながら切る様子は、恐怖でしかありません。

少しでも皮膚に触れたら傷ついてしまうのではないかと、心配するのも無理もないでしょう。もちろん、皮膚を傷つけることはありませんが、どうしてあの硬いギプスを切断できるのに、皮膚は大丈夫なのでしょうか?

ギプスカッターは高速で回転し、その熱でギプスを溶かしています。切断するのではなく溶かしてギプスを患部から離していくのです。

ただし熱を発するので使い方によってはやけどの心配もあるため、ギプスを切断する時は動かないようにすることが第一です。

最近のギプスカッターは静音や振動が伝わりにくいものなど安定性に優れた製品が多数ございます。

「ギプス」「シーネ」「シャーレ」の違い

患部を固定する治療法は、ギプスの他に「シーネ」と「シャーレ」があります。これらはあまり聞きなじみがないかもしれませんが、シーネはギプス包帯の副木(ふくぼく)です。

骨折した部位を固定しますが、どちらかというと応急的な処置に用います。シーネは副子(ふくし)、添え木、スプリントとも呼ばれます。

なお、シーネは脱臼には使用しません。一方シャーレは、ギプスのように完全固定ではないので、取り外しも可能です。

シーネの素材は用途、部位、患部の状態により様々です。

・ソフトウレタンで金属副子をかぶせたもの
・アルミ合金板とウレタンフォームが一体となったもの
・レントゲンでも透過するプラスチックに特殊なクッションをもたせたもの
・厚紙でできたもの

鉄板をギプスにあてがう

一方、シャーレはギプスを縦半分に切って、ストッキネット(チューブ包帯)でカバーします。

ストッキネットは、体の輪郭にフィットし、ギプスをした状態でカバーするので、どうしても蒸れやすくなります。そこで吸湿性が高いもの、また消臭効果があるシャーレが多く製造されています。

怪我をした足

シーネもシャーレも医師の指示なく取り外さないようにしてください。

日常生活とギプス

突然の事故や負傷により「今日からギプス」と診察されたら、驚きと心の準備に戸惑うことでしょう。捻挫は何度か経験したことがあるものの、骨折は一生に数回あるかないかですよね。

そこで、日常生活におけるギプスについてご紹介します。

歩行

骨折した足

脚の骨折の場合、歩くことがままなりません。治療は安静に固定することが大前提。動き回ることはご法度です。

とはいえ、日常生活でじっと座ったり、寝たきりになったりするのは難しく、杖や松葉杖を使います。杖は歩行時に安定させるため、また体重を保持するために使用します。

松葉杖は杖よりも身体に沿う部分が多く、杖への荷重が多いため、骨折をした時の体重免荷や、支持性拡大があるので多く使用されています。

その分、上肢や体幹の十分な筋力が必要になり、意外にも体力を要します。

外出する際は、片脚は普段の靴を履くことができますが、ギプスをしていると靴を履くことができないので、ギプスサンダル、キャストシューといった専用の靴があります。左右兼用で、着脱しやすいのが特徴です。

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腕の場合は?

骨折した腕

昔は腕にギプスをした時、固定するために三角巾を首から掛けることがありましたが、最近はアームスリングが主流です。アームスリングは、キャストシューと同様に一人でも着脱が可能。

頸部への負担を軽減するために肩パッドが付いているタイプもあります。腕のギプスをした場合、片腕しか動かすことができないので、パソコンのキーボード、スマートフォンも使うことが難しくなるのも困りものです。

とはいえ安静にしなければならないので、無理しないことが一番です。

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車の運転は?

天秤

利き手(脚)やそうでない場合でも、ギプスをして運転することは避けた方が良いでしょう。厳密には道路交通法上、「ギプスをしていると交通違反になる」ことはありません。
ただし、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作する」ことが求められている以上、ギプスによって運転が確実に操作できるとは認められず、違反になる可能性は高くなります。

入浴・シャワー

水が出てるシャワー

骨をあたためて身体の血流をよくするために入浴したい場合は、医師の確認を取ることができれば可能です。ただし、ギプスは入浴時でも取り外すことはできません。通気性はないので湿気のある浴室、さらにギプスが濡れてしまうと蒸れの原因になります。なるべくギプスは濡らさないようにしてください。
タオルでギプスを巻いてビニール袋で包んでゴムで留めても良いですし、ギプス用のシャワーカバーが脚・腕用があるので、専用のカバーを利用するのも良いでしょう。
濡れてしまったらドライヤーで乾かすようにしてください。

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下着の変化(下着かぶれ)

先述のとおり、ギプスは石膏や特殊なプラスチック素材でしっかりと固定するため、通気性はよくありません。さらに蒸れてかゆみを伴うことがよくあります。先が鋭利なものをギプスに突っ込んで掻いてしまうと、皮膚を傷つけてしまうので、尖ったもので掻くのは避けましょう。
またギプスの縁が肌と触れ合うと擦れてしまい、赤みを帯びることがあるので、医師に相談しながら、保護クリームやローションなどを塗ってケアしてください。

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横になる時は?

骨折した部位は炎症を起こし腫れています。また安静にして固定しなければならないので、その分むくみやすくなります。むくみを防止するためにも心臓より高い位置におくことが大切です。
寝る時は枕やクッションを利用して脚を上げて寝るようにしてください。また睡眠不足は身体によくないので、しっかり夜に睡眠をとるように心がけましょう。

痛みを感じたら

ギプスは包帯で巻かれている状態のため、患部の様子を直接見ることができません。
そのためギプスを巻いている周囲の状況を見ながら、ギプス内部で支障がないかを確認します。痛みの他に何か感じたら、必ず医師に相談するようにしましょう。

・ ギプスを巻いている部分が痛みやしびれを感じる
・ 患部が腫れていて巻いている部分がきつく感じる
・ 手足が冷たくなる
・ 爪の色が白や紫になる
・ ギプスがあたる箇所(縁など)が痛い
・ ギプスを巻いていない部分のむくみや腫れがある

せっかく治療しているのに、悪化して別の治療が必要になったら、元も子もありません。ギプス療養中は、ギプスをつけたままの生活に慣れるのが難しく、ご家族をはじめ周りの方々のサポートが必要です。
しっかりギプスを固定して、一日も早くギプスを取り外せるように安静に過ごしましょう。

よくある質問

ギプスとギブスどっちが正しい?

正しくはギプス。ドイツ語でGips、意味は石膏です。

ギプス、シーネ、シャーレの違い

シーネは骨折した部位を固定する副木(添え木)で、応急的な処置に用いられます。
シャーレはギプスを縦半分に切りチューブ包帯でカバー。完全固定ではなく取り外しが可能。

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