【男性の更年期障害とは?】予防と対策について

目次

更年期障害と言えば、女性特有の病気と思われていましたが、最近は男性にも更年期障害があると認知されつつあります。
女性であれば、閉経前後のホルモンバランスの崩れにより症状が出ることが多く、閉経が近づいてきたら何かしらの対策を講じることができますが、男性の場合は女性のようなサインはありません。
そのため、更年期障害によって疲労やメンタル不調が続いても原因がわからず、そのまま放置してしまいますます状況が悪くなる一方に。
男性芸能人自ら更年期障害を公表するケースが増え、徐々に理解度が高まっている男性の更年期障害。一体どんな症状なのか、そしてどうやって乗り越えればよいのでしょうか?

男性の更年期障害(加齢男性性腺機能低下症候群、LOH(ロー)症候群)とは

症状

男性の更年期障害はどのような症状があるのでしょうか?
具体的には、「疲れがたまる」「性欲がわかない」「何をするのも意欲がわかない」などの症状が現れます。
疲労感や性欲の低下を感じるのは、年齢のせいだと一人納得し、しばらくしたら元に戻るだろう、と気を紛らわせてしまいがちですが、放置するのは危険です。

考え事をしている男性のイメージ

男性の更年期障害についてはセルフチェック※があり、10項目のうち3つ以上該当、また①と⑦の両方チェックした場合、更年期障害の可能性があると言われています。

  • ① 性欲が低下した
  • ② 元気がない
  • ③ 体力が低下した
  • ④ 身長が低くなった
  • ⑤ 毎日の楽しみが少ない
  • ⑥ もの悲しい・怒りっぽい
  • ⑦ 勃起力が弱くなった
  • ⑧ 運動能力が低下した
  • ⑨ 夕食後にうたた寝をする
  • ⑩ 仕事がうまくいかない

※参照:日本メンズヘルス医学会

身体面と気持ちの面に分けて、具体的な症状をご紹介します。(個人差があるので、すべての症状が現れるわけではありません)

【身体の症状】

筋力低下、関節痛、筋肉痛、疲労感が現れます。また、男性特有の症状としては「性欲がわかない」「勃起しない」があります。
女性の更年期障害と同じく、異常発汗やほてり、のぼせも現れます。

【気持ちの症状】

やる気・意欲がおきない、眠れない、倦怠感、集中力低下、うつ症状、イライラ、物忘れなど。男性の方が、心理的要因において強い症状が現れるようです。

downのイメージ

ホルモンが原因

では男性の更年期障害はなぜ起こるのでしょうか?原因は、女性と同じようにホルモンだとされています。
男性の場合、男性ホルモンの代表であるテストステロン(Testosterone)は、骨や筋肉の成長を促したり体脂肪を減らしたりなどの働きがあります。その例として、日本人男性の標準体脂肪率は平均10~20%ですが、女性の平均は20~30%です。
また性欲を起こしたり、勃起のスイッチを入れたりするのもこのテストステロンが働いています。

更年期障害の原因は、このテストステロン分泌量の減少と言われています。テストステロンの分泌量が、10~20代をピークに加齢とともに低下すると、筋肉量が減り徐々に基礎代謝も低下していきます。
ただし、分泌量の減少は、加齢だけが原因ではありません。むしろ、精神的に満たされないストレスや、生活習慣の乱れが影響しているとも言われています。

悩む男性のイメージ

よく例にあがるのが、生活リズムの乱れです。定年前の男性は、規則的に会社へ出勤し、仕事をして、帰宅する、という生活リズムがありました。しかし、定年後は生活のリズムが崩れ、社会との関わりが絶たれることから、テストステロンが減ってしまいます。
さらに、プライベートで趣味や楽しみがないと、ますますテストステロンが減り、あらゆるモチベーションが低下し、更年期障害の原因につながるのです。もちろん、定年後の男性全員が更年期障害になるわけではありませんが、早いうちから何らかの趣味や体を動かす習慣を取り入れて、仕事とプライベートのオンオフの切り替えることが必要といえるでしょう。

新型コロナ感染症の影響も

コロナ渦の中、急な在宅勤務への切り替えや、気軽に相談できる相手がいない孤独感、コロナウィルスに対する恐怖感、行動制限の自粛など、様々なストレスがかかります。そのためコロナ禍は、テストステロンの分泌量が減少する要因として挙げられています。
一人暮らしの場合は、孤独感を感じます。また、ご家庭をお持ちの場合は今まで外で働いて感謝され続けていたはずなのに、四六時中家にいると「感謝が薄れているのでは?」「居場所がなくなった」などと思い、塞がってしまうケースもあるようです。

女性の更年期障害との違い

悩む男性と女性のイメージ

女性の更年期障害の場合、一般市販薬のテレビCMや雑誌の広告でもよく見かけるほど、4~50代前後の閉経前の女性は更年期障害に罹りやすいと言われています。
女性の更年期障害は女性ホルモン、エストロゲン(Estrogen)の減少が原因です。エストロゲンが減少すると、脳は「ホルモンが足りない」と卵巣に分泌するように指示をしますが、卵巣は老化のため機能が衰えているので、今までのように分泌することができません。そして、自律神経が乱れ体調を崩してしまうのです。
症状はのぼせ、ほてり、多汗の他にも、不眠や不安、肌荒れ、肩こり、片頭痛、冷え、頻尿など、男性と同じように様々な症状が現れます。

男性と女性の更年期障害の違いについては、下記のとおりです。代表的な違いは、「ホルモンの種類」「発症の目安がない」「性欲の減退」が挙げられます。

女性の更年期障害 男性の更年期障害
減少するホルモン エストロゲンの減少 テストステロンの減少
主な症状 発汗、ほてり、のぼせ、頭痛、耳鳴り、めまい、不安感、イライラなど 発汗、ほてり、のぼせ、倦怠感、不安、うつ、疲労感、無気力、性欲の低下、勃起障害
発症の目安 閉経前後 発症の目安がない、中年以降に多いと言われているが、若年層でも発症する場合がある
その他 発症してから徐々に症状が現れなくなる 女性の閉経のような目安がないため、終わりがいつなのか先が見えない(自覚もない)

女性であれば、更年期のサインとして閉経が思い当たりますが、男性はそのサインがありません。

疲れが取れない、何をするのも不安、やる気が起こらない、性欲がなくなる、塞ぎがちになるという症状があったとしても、「更年期障害なのでは?」と自覚しづらいです。
家族や職場からも気づき・理解を得られないことが多く、ますます落ち込んでうつ病になる可能性も。
不調が続く、やる気が起こらない、性欲がわかないなどの自覚があったら、年齢を理由に放置しないで、まずは受診することをおすすめします。

治療について

何科に受診するか

では男性の更年期障害は何科を受診すればよいでしょうか?女性であれば婦人科や更年期外来がありますが、男性の代表的な診療科目は「泌尿器科」です。ただし、うつや精神的な症状がある場合は「心療内科」の受診が良いでしょう。また、専門外来としてメンズヘルス外来もあります。
検査は、血液に含まれるテストステロン値を計測します。血液中の遊離型テストステロン値が8.5pg/ml未満の場合、更年期障害の治療の対象となります。

治療について

治療では、症状にあわせて薬を処方します。
のぼせやほてり、自律神経の乱れなどがある場合は、それぞれの症状に良いとされる漢方薬で対処します。心の症状がみられる場合は抗不安薬や抗うつ薬、勃起症状にはED治療薬を処方します。

重度の場合は、男性ホルモン補充療法として、テストステロン製剤を投与(注射)します。ホルモン補充療法は、投与量が増えると血液濃度が上昇したり、長期間補充すると精子をつくる機能が損なわれたりなどの副作用のリスクにも、注意が必要です。

参考までに、女性向け更年期障害の市販薬は、男性に対しての効果は実証されていません。男女ではホルモンの種類が異なるうえ、それぞれ特有の症状があるので、服用してよいかどうかは、医師に相談することをおすすめします。

薬のイメージ

どうやって乗り越える?予防と対策について

男性更年期障害は前述のとおり、保険適応範囲での治療方法があります。症状は人によって異なるのと同じく、治療期間も個人差があります。
治療と同時に、生活習慣を見直し改めることをおすすめします。生活習慣を見直すことで、予防にもつながるでしょう。

テストステロンの低下を防ぐために、下記のような取り組みを心がけてみてください。

運動

筋肉を動かして、筋力をつけましょう。軽いウォーキングよりも、早歩きがおすすめです。
他にも、スクワットを継続して行うことで、テストステロンの分泌量が高くなってきます。

競い合う

競い合うといっても、激しい競争ではありません。男性は古来より獲物を捕らえる・戦うといった役割によって、狩猟本能や闘争心があるので、ちょっとしたスポーツやゲームで対戦してみましょう。その結果テストステロンが増え、予防につながります。

規則正しい食事とカルニチン(アミノ酸)

筋力の成長に欠かせないテストステロンには、たんぱく質が必要です。テストステロンを増やす食べ物として挙げられるのが、「カルニチン(アミノ酸)」を含む食品です。
たんぱく源となる肉類に多く含まれていますが、中でも羊肉(ラム)はカルニチンを多く含んでいます。たんぱく質を取り入れながら、バランスよい食事を摂取することが大切ですね。

ストレスフリー

ストレスをためないことが何よりです。仕事や家庭で悩みがあるなら誰かに相談し、発散できる趣味を持つことが良いでしょう。
また、お風呂にゆっくり浸かり体を温めることも効果的です。間違っても、ストレス発散だからといって喫煙や飲酒、暴飲暴食をしないように。

ランニングをする男性

テレビで活躍しているタレントのヒロミさんは、体調不良と不安状態で落ち込んでいる様子を見た妻の松本伊代さんに「病院に行ってみたら?」と言われ、病院で検査を受けて更年期障害と診断されました。
男性の更年期障害は、知らず知らずのうちに罹ってしまいます。不安になることが多々あるだけに、誰にも相談できないまま放置しがちですが、危険です。
早期発見と早期治療、そしてテストステロンが減らないような生活習慣を意識することが一番といえるでしょう。

よくある質問

男性の更年期障害の症状は?

主な症状として、発汗、ほてり、のぼせ、倦怠感、不安、うつ、疲労感、無気力、性欲の低下、勃起障害がございます。

男性の更年期障害の原因は?

テストステロンと呼ばれる、男性を代表するホルモンの分泌量減少が原因とされております。
分泌量の減少は加齢・精神的ストレス・生活習慣の乱れが影響していると言われています。

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