薬は服用することで、病気の予防や処置の手助けをしてくれます。今でこそ多くの種類がありますが、薬はいつの時代からあるのかご存知ですか?
世界最古の文明が発達していたメソポタミアをはじめ、インドや中国などには薬にまつわる記録が残っています。また、日本では縄文人の住居跡に薬と思われる草木が発見されています。それほど古くから人間にとって必要不可欠だった薬について、改めて種類や服用方法をご説明します。
薬の種類
薬は大きく二つ、医療用医薬品と一般用医薬品に大別されます。
医療用医薬品
医療用医薬品とは、医師の処方箋が義務付けられていて、薬剤師による調剤で処方される医薬品のことです。
流れとしては、まず医師が診察を行い、処方箋を作成します。それを元に、薬剤師が患者の病気やケガの症状、体質を把握したうえで薬を調剤し、処方します。
おくすり手帳があると、どんな薬を服用していたのか過去の履歴がわかるので、調剤薬局へ行く時は持参する方も多いと思います。(最近ではおくすり手帳をアプリで管理できる薬局もありますね)
一般用医薬品
一方、薬局やドラッグストア、インターネット、また種類によってはコンビニエンスストアで購入できるのが一般用医薬品です。市販薬やOTC薬(Over The Counter)と呼ばれることもあります。
市販薬は処方が不要なので、容易に購入することができますが、一部の医薬品は薬局にいる薬剤師による説明が必要な場合もあります。市販薬は医療用医薬品よりも有効成分は少なく含有されているため、効果は比較的緩やかで控えめです。
種類 | 内容 | 例 |
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第1類医薬品 | 効果が高く、副作用や飲み合わせにリスクがあるため、店内にいる薬剤師による説明が必須 | 解熱鎮痛剤ロキソニン、毛髪用薬 |
第2類医薬品 | 副作用や飲み合わせに注意が必要。薬剤師による説明は努力義務 | 市販薬の大半が第2類医薬品。風邪薬など。 |
第3類医薬品 | リスクは比較的低い。情報提供の規定はない | ドリンク剤、整腸剤など |
医薬部外品とは
うがい薬、虫よけスプレー、のど飴、入浴剤、ヘアカラー、制汗スプレーなどの医薬部外品は、医薬品とどう違うのでしょうか?
医薬部外品にも有効成分が含まれています。ただ、積極的に治療を行うものではなく、「防止」や「衛生」を重視しています。人体の影響が穏やかであることから販売規制がなく、薬剤師不在のお店やインターネットでも購入可能です。
形状
普段よく目にする薬といえば、錠剤や粉末、カプセルですが、具体的にどんな形状があるのでしょうか?
1. 内用剤
口から服用する薬が、内用剤です。錠剤、カプセル、粉薬、シロップ剤など、さまざまな形状があります。
錠剤は、飲みやすい形状に加工されています。最近では、水が不要のお薬(チュアブル錠)も市販されています。粉薬は体内への吸収が早い一方、苦みを感じたり蒸せたりすることも。
2. 外用剤
皮膚につける軟膏や貼り薬(=湿布)、目・口・鼻の部位に服用する薬が、外用剤です。目に使う点眼剤(=目薬)や、喉の炎症を抑えるトローチ、ぜんそくの吸入剤も外用剤です。
3. 注射剤
点滴や注射など、筋肉や血管に直接服用するのが注射剤です。
薬の服用
薬の正しい服用
薬は、処方に沿って正しく服用することが第一です。そのため、特に医療用医薬品は薬剤師による説明が必要不可欠であり、間違った飲み方では薬の効果が発揮できないだけではなく、副作用を起こす可能性もあります。
医療用医薬品は、薬剤師からのアドバイスを忘れないようにしましょう。飲み方を忘れた場合は、薬が入っている薬袋(やくたい)やおくすり手帳に貼り付けた内容を確認することが重要。
一般用医薬品は、パッケージや中に同梱されている添付文書の「用法・用量」「使用上の注意」を確認しましょう。わからないことがあれば、購入店舗もしくはパッケージに記載があるメーカーのお客様相談室に連絡してください。
なお、内服薬を飲む時は、1杯の水かぬるま湯で飲みましょう。それ以外の液体(ジュースやお茶、アルコール)は効果に影響を与えたり、副作用を起こしたりする可能性があるので、注意が必要です。
服用のタイミング
食前、食後、食間など、薬によって飲むタイミングに違いがあります。くれぐれも飲み忘れには気を付けましょう。
食前 | 食事の約30分前 |
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食後 | 食後約30分まで |
食間 | 食事と食事の間(食後2-3時間後)※食事の最中ではありません |
就寝前 | 寝る約30分前 |
都度 | 咳止めなど症状が出たら服用する |
1回飲み忘れたからといって、あわてて2倍量を飲むのは危険です。また、風邪薬をはじめ、一日の服用量が決められている薬は、それ以上服用しないようにしましょう。
小さなお子様
小さなお子様は錠剤が大きすぎると飲みにくく感じ、また苦みに敏感です。かといって、食事に混ぜてしまうと食べ合わせによって効果に影響が出るので、できるだけ薬だけを決まったタイミングに服用させることが必要です。
粉薬は水で溶いて、少量を口の中に入れてあげる方法が多いようです。嫌がる場合は、間にアイスクリームやヨーグルトなどを一口ずつご褒美に食べさせても良いかもしれません。 オブラートに包んだり、服薬ゼリーを用いたりしても良いでしょう。
高齢者や介護が必要な方
高齢になると薬の量が増えます。ほぼ毎日何種類もの薬を服用しなければならないので、管理が大変です。
飲み忘れを防ぐために、アプリに連動してアラームでお知らせする機能もありますが、近くに設定できる方がいないと、ほとんどの高齢者には使いこなせません。 そこで、昔からなじみがあるのがお薬カレンダーです。月~日まで、朝・昼・晩・寝る前のどのタイミングでどの薬を服用すればよいかを確認し、カレンダーのポケットに入れておけば一目瞭然です。
また、高齢者は筋肉が衰えているので、カプセルや錠剤を取り出す指の力も思うように出ません。最近では簡単に薬が取り出せるツールがあるため、取り入れてみましょう。
薬の保管について
薬は基本的に、直射日光があたる場所や高温多湿での保管は禁じられています。変質すると効果に影響するので、直射日光を避けて涼しく湿気のないところに保管しましょう。服用する分だけピルケースに移した場合も同様です。
車をお持ちの方は、うっかり夏場の車内に置きっぱなしにしないように。エアコンを切った夏場の庫内温度は、40~50℃近くまで上昇します。
保管場所
ご家庭であれば、救急箱に保管することが多いでしょう、その際の注意点としては、薬袋や市販薬の外箱から出さずに、また別の袋や容器に入れ替えずに保管することです。 服用方法や期限が、わからなくならないようにするためです。また、湿布薬はきちんとチャックを締めて保管しなければ、乾燥し粘着力がなくなってしまいます。
保管温度
医薬品の規格基準書「日本薬局方」によると、薬の保管温度について以下のように定められています。
室温 | 1~30℃ |
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冷所 | 1~15℃ |
常温 | 15~25℃ |
薬剤師からの指示、または薬袋や添付文書、市販薬のパッケージに保管の指示があればそれに従います。もし指示がない場合は、湿気があるところや直射日光を避けて「室温」で保管します。錠剤やカプセルなど、シートに入っている薬はシートから出さずに保管します。
涼しいところが良いからといって、なんでも冷蔵庫に入れるのは良くありません。薬によっては冷たい冷蔵庫から室温に出した時の温度差により、結露で湿気を取り込んでしまうからです。
冷所保存が必要な座薬や一部の目薬、シロップなどの薬は冷蔵庫に保管してください。その際、冷蔵庫にある食品と混在しないように分けておきましょう。
保管湿度
湿気は薬にとって大敵です。空気中の水分を薬が吸収すると、変形や変色し効果に影響します。
台所や洗面所など、水場の近くに置いた方が薬を飲みやすいと思われるかもしれませんが、水しぶきが飛んでしまうこともあるので、保管には適しません。
小さなお子様には注意
小さなお子様の手が届く場所に保管すると、誤飲の危険性があります。
アメリカでは、子供の誤飲防止のため安全対策を施した容器、「チャイルドレジスタンス包装(CR包装、Child-Resistant Packing)」が法律で定められています。例えば、錠剤が入ったボトルの蓋は押し下げて回さないと開きません。それほど幼児の薬の誤飲は昔から多発しており、危険であることがうかがえます。
このCR包装は日本でも導入の検討が進められているようですが、まだ時間がかかりそうです。日常的な保管場所には注意しましょう。
期限
薬には使用期限があります。市販薬は製造から3年が目安とされています。市販薬のパッケージには使用期限が記載されており、期限を過ぎたものはそれだけ有効成分が減っている可能性もあります。勿体ないと思わず、処分しましょう。
では、処方された医療用医薬品の期限はどうでしょうか?「治りかけてきたから飲まない」のは望ましくなく、基本的に処方薬は最後まで飲み切ることが原則です。そのため、そもそも期限切れという状態にはならないはず。また、家族や知人で自身と似た症状だからといって、余った処方薬を分けるのも禁止されています。
処方薬はその人の体調やアレルギーの有無などを確認したうえで処方されるので、いくら家族であっても他人への譲渡はしないように。もし飲み忘れで余ってしまうようであれば、お薬カレンダーやアプリを利用して飲み忘れを防止しましょう。
一方、病院で処方された軟膏や目薬などの外用剤は、部位の大きさや塗る頻度によるので、治療後に余ってしまうこともあります。これらは皮膚などの患部に接するため雑菌が入りやすく、いくら冷暗所に保管しても雑菌の繁殖や効果減退の可能性が高くなります。
処方薬の種類によっても使用期限が異なります。お手元の薬が余っていたら病院や調剤薬局で処分してもらえることもあるので、相談してみましょう
錠剤やカプセル(シートに入った状態) | 通常半年~1年 |
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座薬(冷蔵保存) | 通常半年~1年 |
目薬 | 開封後は保存料が入っていれば1か月、入っていなければ約10日 未開封であれば使用期限まで |
吸入剤 | 記載された使用期限まで |
インスリン(冷蔵保存) | 未開封であれば使用期限まで |
なお、市販薬の期限は製造後3年程度がほとんどです。パッケージに記載している期限を過ぎていれば、処分しましょう。
よくある質問
薬の種類は?
薬は大きく分けて医療用医薬品と一般用医薬品がございます。
医療用医薬品は医師の診察から処方箋を作成し、それをもとに薬剤師が調剤し処方します。一般用医薬品については第1類・第2類・第3類医薬品に分類されます。一般用医薬品はドラッグストアや通販などでお買い求めいただけますが、医療用医薬品よりも有効成分の含有量は少なく、効き目も抑えめです。
薬の正しい保管方法は?
薬は直射日光・高温多湿での保管は禁じられております。保管温度は日本薬局方にて定められており、室温は1~30℃、冷所は1~15℃、常温は15~25℃です。なお薬剤師からの指示、薬のパッケージに保管の指示がある場合はそちらに従ってください。