コロナ禍での使い捨て手袋
新型コロナウィルス感染症の拡大により、世界中で品不足になったものといえば「サージカルマスク」「エプロン」「ガウン」「除菌・殺菌剤やシート」が挙げられますが、「使い捨て手袋(特にニトリル手袋)」も同様に、急激な品不足と価格が高騰したアイテムのひとつです。
言うまでもなく「使い捨て手袋」は医療現場では必須です。血液や体液、注射針による汚染リスクから医療従事者を守ること、またその逆に、患者や施設内に汚染物質が広がらないようにするために、手袋は絶対に欠かせません。新型コロナウィルス感染症が拡大した時は、多くの現場で手袋が使われたため、ありとあらゆる医療従事者、介助者、エッセンシャルワーカーの方々は医療用手袋を入手することが困難となり、患者と接触していない手袋は洗って使い回しして節約することも多かったようです。
一方、医療用以外にも食品衛生の観点から、食品加工場や食品を扱う店舗、飲食店では食品衛生法の規格にあった手袋を装着します。その他にも、美容院でのカラー染料使用時をはじめ、清掃時、製造加工業、土木建築、研究職でも使われています。新型コロナウィルス感染症の影響で、これまでグローブを使わなかった業種でも感染予防のために、手袋を装着して従事することが増えたのではないでしょうか。スーパーや店舗のレジは不特定多数の人から金銭を授受するだけでなく、商品を介しての接触があるので、手袋を装着して従事することが増えてきました。
一般家庭では、これまで掃除やお皿を洗う時に手荒れ防止で手袋を装着することがほとんどでしたが、新型コロナウィルス感染症が拡大したことで、家庭内の感染予防に医療用手袋を備蓄したというケースもありました。またコロナ禍での防災意識が感染対策にも広がったことで、自治体でもニトリル手袋の備蓄が多くみられています。
使い捨て手袋の種類
医療用、食品用、掃除用、作業用、感染予防用に様々な用途がある手袋ですが、どのような種類や特徴があるかご紹介します。
種類 | ポリエチレン手袋 | プラスチック・ビニール手袋 | ラテックス手袋 | ニトリル手袋 |
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素材 | ポリエチレン | PVC(塩化ビニール) | 天然ゴム | 合成ゴム |
用途 | 調理、食品加工、配膳、軽作業、感染予防 | 清掃業、美容院、軽作業、感染予防 | 医療用、水仕事、調理、食品加工、軽作業、感染予防 | 医療用、食品加工、調理、実験・検査用、感染予防 |
特徴 | 他素材の手袋に比べると伸縮性がない。着脱しやすく強度も弱いので、指先で細かい作業には向かない。食品業界で広く使われています。 蒸れやすく破れやすい。 | 薬品や溶剤、油や洗剤などに強いことから、幅広いシーンで使われています。食品には直接触れることはできません。強度や伸縮性はゴムに比べると弱い。 | 天然ゴムが原料なので伸縮性があり滑りにくい。そのため手になじみやすい。ただしプラスチック手袋とは逆に薬品や溶剤には弱い点、ゴムの臭いやアレルギーがある方は長時間の着用は難しい。 | 合成ゴムにより伸縮性もあり、薬剤にも強く、プラスチック手袋とラテックス手袋の利点を合わせた手袋。長時間使用可。ラテックスゴムのアレルギーがなく、医療現場ではニトリルが主流。 |
価格 | 安価 | やや安価 | やや高価 | 高価 |
コロナ禍の影響でより一層身近になって、使うことが増えたマスク、そして手袋。本コラムでは主に医療用手袋の代表的な「ニトリル手袋」について詳しく説明いたします。
ニトリル手袋について
ニトリル手袋はニトリルゴムという合成ゴムを原料とした手袋です。1箱に30~100枚程度入ったものが多く流通されており、医療現場ではサージカルマスクと同じく、常に使い捨て(ディスポーザブル)で使用しています。
ラテックスフリーとは
よくニトリル手袋の説明文に「ラテックスフリー」という言葉を目にします。これらは「ラテックスアレルギー」などのアレルギーに関わる重要な表記です。
「ラテックスアレルギー」とは、天然ゴムの成分「ラテックスタンパク質」がアレルゲンとなり、アレルギーを引き起こすものです。ラテックスアレルギーは皮膚の痒みや炎症、蕁麻疹(じんましん)の症状だけではなく、重度になると呼吸困難や意識朦朧、アナフィラキシー症状を引き起こすため、注意が必要です。
ラテックスフリー」と表示があるものは、原料にラテックス天然ゴムが含まれていないことを指します。安心して使えるのもニトリル手袋のメリットといえるでしょう。
ニトリル手袋の色
ニトリル手袋の色は白、ピンク、紫色等ありますが、「青」が主流です。なぜ青色のニトリル手袋が多いのでしょうか。
それは食品衛生上の理由で、食品=口にするものには「青色」がありません。「もし食品工場で工程中に手袋が混入してしまったら?」・・・という、最悪の事態でも青色だと発見しやすいこともあり、青色のニトリルグローブが主流になったようです。
医療現場では血液や体液の付着有無を確認できるよう白色を用いる病院もあり、施設や用途に応じて色を選択することができます。
ちなみに手の大きさに合わせてサイズ展開(SS~LL以上)があるので、使用する現場でサイズがわかりやすいように外箱の色を替えているメーカーもあります。
最近では箱から1枚1枚取り出しやすいような工夫もあり、ニトリル手袋を現場で使いやすくするために、素材や箱にまで改良を加えていることがうかがえますね。
ニトリル手袋の原産地
ニトリル手袋の国内生産はほぼなく、海外からの輸入がほとんどです。世界最大の生産国はマレーシアです。
新型コロナウィルス感染症が世界的パンデミックになった時は、マレーシアの工場でも感染者が広がり、工場は一時閉鎖に追い込まれました。そのため供給が追い付かず、世界中でニトリル手袋が入手困難となり、2020年末にかけて価格が2~3倍に高騰。
不織布マスクと同じく、現場で必要不可欠なアイテムで、安価で入手できていた備品が、コロナによって瞬く間に入手困難になるとは、誰も想像できなかったのではないでしょうか。
ニトリル手袋の測り方
ニトリル手袋はサイズが合わなければ、小さいと破けたり、大きいと外れやすくなったり手袋をしての作業に影響が出ます。ニトリル手袋をはじめ、使い捨て手袋にはサイズ「全長」「手の甲(手のひら)」「中指の長さ」が明記されています。改めてメジャーや定規でご自身の手のサイズを測って、ご自身の手のサイズと手袋が合っているのか確認してみましょう。
ニトリル手袋の素材
ニトリル手袋の素材(原料)はニトリルゴムという石油系の合成ゴムです。アクリルニトリルとブタジエンを共重合したもので、耐油・耐熱性があるので、手袋以外に自動車部品や工業用品にも使用されています。
ニトリル手袋には「パウダー付き/なし」があります。パウダー付きは手のすべりをよくするので、装着しやすい一方、個人によっては痒みを伴う場合があります。また食品業界では粉が食品に付着することを避けるために、パウダーなしが好まれるので、メーカー各社とも、「パウダーなしで着脱しやすい」ニトリル手袋の開発が進んでいます。
ニトリル手袋の強度
ニトリル手袋の特徴はなんといっても「耐久性」と「伸縮性」です。強度があり、薬剤や油脂に耐性があるだけではなく、先端が鋭利なもので刺してもピンホールを防ぐことができる耐突刺性もあります。
ゴムの特性を生かして、手にぴったりフィットするので、ポリエチレン手袋のように脱ぎやすくありません。
医療業界はもちろん、食品衛生法に適合しているため、ニトリル手袋は食品業界でも幅広く使用されています。
また、ニトリル手袋には「パウダー付き/なし」があります。パウダー付きは手のすべりをよくするので、装着しやすい一方、個人によっては痒みを伴う場合があります。
また食品業界では粉が食品に付着することを避けるために、パウダーなしが好まれるので、メーカー各社とも、「パウダーなしで着脱しやすい」ニトリル手袋の開発が進んでいます。
強度、伸縮性、薄手のニトリル手袋はフィット感があり、耐久性、そして作業のしやすさから人気です。
ニトリル手袋と手荒れ
ニトリル手袋には加硫促進剤を含む製品があります。加硫促進剤とは原料を安定させるためにニトリル手袋の製造工程内で使用される化学物質です。加硫促進剤は化学物質のため、肌が弱い人はアレルギーや皮膚過敏症の症状が出る場合があります。もし加硫促進剤が原因でアレルギーや手荒れの症状が出た場合は、加硫促進剤無添加の手袋を選ぶようにしてください。なお、アレルギー反応の有無ついては皮膚科でパッチテストを実施することになります。
加硫促進剤フリーの手袋
おすすめのニトリル手袋
現在は一時の品薄や高騰から落ち着き、安定した数と価格で供給されるようになりました。また医療現場や食品業界だけではなく、一般のスーパーや飲食店でも使用される機会が増えたので、様々なニトリル手袋が販売されています。
他のプラスチック手袋やポリエステル手袋と比べると、ニトリル手袋はやや高価です。素材が合成ゴムなので、どうしても商品によって差があるのは否めませんが、できるだけ安価かつ、使い勝手のよいタイプを継続して使いたいものですね。
特殊加工により滑りがよく、手が濡れていても着脱がスムーズです。
よくある質問
ニトリル手袋とは?
ニトリルゴムと呼ばれる合成ゴムを原料とした使い捨て(ディスポーザブル)の手袋。主に医療業界や食品業界で使用されることが多いです。
食品業界では手袋混入にいち早く発見できるよう青色がよく使われ、医療現場では血液・体液の付着有無を確認するのに白色を用いるところもございます。
ニトリル手袋の特徴は?
使い捨ての手袋でありながら耐久性と伸縮性に優れています。薬剤・油脂への耐性だけでなく、先端が鋭利なもので刺してもピンホール(小さな穴)を防ぐこともできる強度の高い手袋。